フナムシ、キタフナムシ、フナムシの隠蔽種?
フナムシについてはあまりくわしくない。ダンゴムシのほうが好きなもので。
雑多な知識をまとめた。
フナムシ科とワラジムシの見分け方
フナムシ科 Ligiidae のフナムシ属 Ligia は、おもに海岸にいる動物である。
群れでいるとキモい。1匹だとかわいい。
(例外的に淡水域(ナガレフナムシ)や森林にいる種(オガサワラフナムシ)もある。)
ワラジムシとフナムシの違いは尾肢にある。
フナムシ科は、尾肢内肢が腹尾節からかなり離れる特徴がある。
またフナムシ科はペニスが2本で、ワラジムシは1本である。
フナムシ属とヒメフナムシ属の見分け方
海岸にいるフナムシと山にいるヒメフナムシの違いは、第2触角の鞭(※)の節の数がフナムシは20節以上で、ヒメフナムシは10節ぐらい
ヒメフナムシ
※第2触角の鞭とはタテジマコシビロダンゴムシ
触角の先端の節がいっぱいあるところ。
ダンゴムシやワラジムシは2節だけだが、フナムシ科は数多く節がある。
フナムシ属の種類
日本ではフナムシ Ligia exotica 、キタフナムシ Ligia cinerascens 、リュウキュウフナムシ Ligia ryukyuensis の3種がメジャー。
小笠原諸島や島根県宍道湖にはそれぞれ固有のフナムシがいる。
日本語でフナムシというと、L. exoticaだけを指すときとフナムシ属全体を指すときがあって紛らわしいことになっている。
フナムシ
海藻や死肉などをたべている。
日本のフナムシの遺伝子研究
日本の広い範囲にいるフナムシはフナムシ Ligia exotica とキタフナムシされた。
伊谷結(2000):分子系統解析に基づく日本産フナムシ類(等脚目、甲殻亜門)の系統生物地理、月刊海洋
ミトコンドリアのCOI遺伝子で系統を調べた結果、フナムシ Ligia exotica とキタフナムシの中はいくつかの遺伝的に違う系統があることがわかった。
海岸はずっと続いているにもかかわらず、混ざらず系統ごとに生息地がわかれている。
一部の人工的な海岸では外来のフナムシが移入しているので、遺伝子汚染の危険があるかもしれないと書いてある。
1種類だとされたアマガエルが最近の研究で東西2つの別種に分けられた。
キリギリスやメダカも似たことがわかっている。フナムシも似たようなことが見つかっているらしい。
「フナムシ」の隠蔽種
関東地方の「フナムシ」は他の地域の「フナムシ」と遺伝子が大きく異なっている。
論文の中ではこの系統を、伊豆グループ、八丈グループと名付けている。
伊豆グループは関東と神津島、八丈グループは関東と八丈島にいる。
遺伝子で分けているだけなので、交配の有無や形態の差異についてはわからないが、別の種かもしれない。
一緒に飼育したら交尾するのかな?
かなり昔に伊豆半島、伊豆諸島に流れついたフナムシが隔離されて分化し、伊豆半島の本州への衝突で再び戻ってきたようだ。
まるでニホントカゲとオカダトカゲのようでおもしろい。
キタフナムシの隠蔽種
北海道や東北地方だけにいるとされたキタフナムシ Ligia cinerasens は、四国、九州、朝鮮半島にまでいることがわかった。
(四国の初記録は2012年。「徳島県の礫浜海岸における四国初記録のキタフナムシとマメアカイソガニ」を参照)
キタフナムシも関東とそれ以外の場所で遺伝的に違う。
キタフナムシは礫浜に多く、海藻や海草を好む。
フナムシとキタフナムシは一緒にいない。(関連:かわいいフナムシ Ligia pallasii )
キタフナムシとフナムシの違い
フナムシの方が、体がスマートで尾肢が細長い。
触角の鞭節の数は、フナムシは30節以上、キタフナムシは26前後。ただし中間的な個体もいることがあるらしい。
確実なのはオスの第2腹肢の形。フナムシは先端がとがり、キタフナムシは平ら。
佐賀県の礫浜で採集したものは、
鞭節の数が26。
キタフナムシだ。
館山のフナムシ(場所的にフナムシの隠蔽種?)。
30を超えている
鳥取のフナムシ
鳥取で捕まえたのもキタフナムシのようだ。
フナムシ Ligia exotica の世界的な遺伝子解析
フナムシ Ligia exoticaは世界に広く分布している。
世界中のL. exoticaの遺伝子解析がある。
これによると、フナムシはアジア原産でアメリカやアフリカに外来種として侵入していることがわかっている。
日本を入れた東アジア、東南アジアで各地域で遺伝的に分化しているのに、アメリカやアフリカのフナムシは同じ遺伝子型だったとある。
アジアにいたフナムシのほんの一部が船で世界中に散らばったと予想している。
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