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2016年2月26日 (金)

オオグソクムシの付属肢(前編)

オオグソクムシ Bathynomus doederleini の付属肢について書く。

標本を手に入れたので有効活用してみた。



触角

第1触角(antenna(複数形 antennae) 1、antennule、first antenna)
Imgp4786_2

太い節が柄節(peduncle)、細い節が鞭節(flagellum, жгутик)。

ダイオウグソクムシはもっと長く、3節+46~50節。


第1触角の鱗節状小節(矢印の小さい突起)(antennular scale)
Imgp47862
ワラジムシ目ではオオグソクムシ属、エビヤドリムシ科の幼生、キクイムシ科、ケウピリア科に見られる特徴。

第2触角の鱗節状小節(antennal  scale)はミズムシ亜目で見られる。

Brusca RC 1991 A phylogenetic analysis of the Isopoda with some classificatory recommendations. Mem Queensl Mus, 31, 143-204.


第2触角(antenna 2 =antenna =second antenna, второй пары антенн)
Imgp47822
長い



付属肢ではないがついで。

1_2
顔がイケメンである。

頭部(cephalon)の前方中心が額角(がっかく、rostrum)

その腹側に、額葉(がくよう、frontal lamina)、頭楯(とうじゅん、clypeus)、上唇(じょうしん、labrum)がある。

額葉と頭楯はくっついて1つになっている等脚類もいる。


Imgp47672_1
頭楯が触角の間にでっぱる。



胸脚
Imgp47762
胸節1つから1対の胸脚が出る。

脚の根本は底板 epimere (=epimeron, 複数形 epimara)と繋がっている。


第1胸脚pereopod 1
Imgp9158_2
節の名前は、先端から指節 dactulus, 前節 propodus, 腕節 carpus, 長節 merus, 座節 ischium, 底節 basis で合っているはず。

写真に底節 basis 入れるの忘れた。


脚についている黒いとげは、robust setaeと呼ばれている。

このとげの数や位置が種によって違う。

setaとspikeとspineの違いがわからない…


第2胸脚pereopod 2
Imgp9159_2

矢印の部分が種によって違うと書いてあるものがある。

爪が鋭くて長い。


第3胸脚pereopod 3
Imgp9160
第2胸脚と形が似ている。


第4胸脚
Imgp9161
第4胸脚以降、がらっと形が変わる。


第5胸脚
Imgp9164
色が変なのは、死んで腐ったせい。


第6胸脚
Imgp9165


第7胸脚
Imgp9166


並べた
Imgp9167



→後編に続く。口や腹肢です。


※参考に読んだオンラインで読める文献

NOTE ON THE GIANT ISOPOD GENUS BATHYNOMUS MILNE EDWARDS, 1879 WITH DESCRIPTION OF A NEW SPECIES

BATHYNOMUS LOWRYI SP. NOV. (CRUSTACEA: ISOPODA: CIROLANIDAE), THE FIRST RECORDOFTHE ‘GIANT’MARINE ISOPOD GENUS, FROM THAILAND WATERS

BATHYNOMUS A. MILNE EDWARDS, 1879 (ISOPODA, CIROLANIDAE) FROM THE BRAZILIAN COAST, WITH DESCRIPTION OF A NEW SPECIES

The giant deep-sea scavenger genus Bathynomus (Crustacea, Isopoda, Cirolanidae) in the Indo-West Pacific

甲殻類などの節足動物の体の構造については専門的な分野です。同じワラジムシ目の中であっても種類によって、パーツの名前が違ったり、ここが違うと別種だと言えるというような重要な部位が異なったりします。この辺りは過去の文献を熟読して多くの標本を見る経験が必要なので、正確な内容は専門家に聞く必要があります私はオオグソクムシの専門家ではないので、上に書いた内容が正しいか判断できないです。









ふるさと納税のツイート

ふるさと納税のサイトでオオグソクムシのページを見ると、

「無益な殺生」とか、「わざわざ捕獲して殺すのか」と書かれている。



正直言って、これはすごい!

こういう言葉は、人間にとって愛着を感じる生物にむけて使われる。

犬を殺処分すると「かわいそう」「殺さないで」と言う声が出るが、ゴキブリやダンゴムシを殺処分するための殺虫剤は平然と売られている。

気になって、天然マグロという返礼品のページを見てみると、「わざわざ海から引きずり出して」という批判は書かれていない。



ということは、世間一般はもう

オオグソクムシ>マグロ

なのである。

オオグソクムシに対してこんなに同情の声が集まるなんて嬉しい。

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