ダンゴムシとワラジムシの違い。「丸くなるか」は関係ない。
Wikipediaの「ダンゴムシ」のページには、いくつかミスがある。
例えば、「ダンゴムシとは、ワラジムシ目(等脚目)の動物のうち、陸生で刺激を受けると丸くなる習性を持つものを指す。」
だいたいは正しいのだが厳密に言えば間違い。
丸くなる性質は、ワラジムシ(別名:ゾウリムシ)の一部にも見られる。
丸くなれるワラジムシを「ダンゴムシ」とは言わない。
日本にいる丸まれるワラジムシ→丸くなるワラジムシ: だんだんダンゴムシ
ダンゴムシとワラジムシの形の見分け方
陸生のワラジムシ目は、日本語ではダンゴムシ、ワラジムシ、フナムシの3つに分けて呼ぶ。
日本産の場合おしりで分けるのが簡単
ダンゴムシのおしり
おしりから尾肢が飛び出ていない
体の縁がきれいな曲線を描いている
(外国のダンゴムシには尾肢が飛び出るような種類があるようだ。)
ワラジムシのおしり
尾肢が飛び出ている(オレンジ色の4本)
縁がギザギザ
「キルギス産ダンゴムシ」で検索すると出てくるのはワラジムシ。どうやらScleropactidaeのようで和名がないようである。
フナムシのおしり
おしりから尾肢が2本飛び出ており、Y字に見える
フナムシは海にいてダンゴムシとワラジムシは山にいる、という違いもあるが、
フナムシにも山にいる種類がある。
ダンゴムシ、ワラジムシ、フナムシの科
・ダンゴムシ
コシビロダンゴムシ科 Armadillidae
Eubelidae
オカダンゴムシ科 Armadillididae
ハマダンゴムシ科 Tylidae
・ワラジムシ
ホンワラジムシ科 Oniscidae
ワラジムシ科 Porcellionidae
クキワラジムシ科 Styloniscidae
ヒメワラジムシ科 Philosciidae
タマワラジムシ科 Alloniscidae
…
など多数
・フナムシ
フナムシ科 Ligiidae
ダンゴムシと呼ばれるのは4科。
4科とも丸くなれるが遺伝的に近縁でない。
(Eubelidaeとコシビロダンゴムシ科は近い。Eubelidaeの和名はないが丸くなれるので、将来ダンゴムシと呼ばれるようになると予想してダンゴムシに入れた。)
つまりこうではない↑
偶然、同じようにダンゴになるという進化をした種類を「~ダンゴムシ」と呼んでいるだけにすぎず、親戚ではない。
和名のないScleropactidaeは何とも言えない形なので入れていない。
Cylisticidaeも丸まれるが和名がない。Cylisticus convexus が丸くなっている画像→https://www.bmig.org.uk/species/cylisticus-convexus
これらはダンゴムシとワラジムシの間のような種類なので、将来ダンゴムシと呼ばれるかワラジムシとなるかわからない。
ハマダンゴムシの学名
日本のハマダンゴムシの間違った学名が出回っていると書いた。
wikipediaのハマダンゴムシの学名は間違っており、「T. Granulatus」ではなく、T. granuliferus である。
昔はgranulatusだったらしい。
コシビロダンゴムシの属名
wikipediaのコシビロダンゴムシ属 Sphaerilloも昔の話。
日本のコシビロダンゴムシの属名は、
Armadillo
↓
Sphaerillo
↓
Venezillo(カガホソコシビロダンゴムシ属)
と変遷し、現在は Spherillo 属(タマコシビロダンゴムシ属)になっている。
検索していたら、ブリタニカ国際大百科事典を元にしたkotobankというサイトを見つけた。
ダンゴムシのページはミスが多い。
まずArmadillidium vulgareの和名はオカダンゴムシである。
気管ではなく偽気管。ハマダンゴムシの学名が違う。
>7胸節,6腹節は硬い外骨格に覆われているが,関節間の膜状構造により球状に丸まることができる。
頭部1節も硬い、膜状構造によって丸まるわけではない。
>前後(第3胸節,第4胸節間)2回に分けて脱皮
第4胸節と第5胸節の間である。
>ユーラシア大陸原産
地中海周辺のヨーロッパだから間違いではないが…
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