フナムシ、エビヤドリムシの特殊な脱皮(単相性脱皮)
ダンゴムシの仲間(ワラジムシ目)は、二相性脱皮(biphasic molting)を行う。
後ろ半分を脱皮し、その後、前半分を脱皮して、全身の脱皮を終了させる。
(多くの脱皮動物は一度に全身の殻を脱ぐ)
甲殻類の中で、二相性脱皮をするのはワラジムシ目だけ。
近縁なヨコエビやタナイスはしない。
この脱皮方法は、ダンゴムシたちの代表的な特徴と言える。
ただし、ワラジムシ目の中でも二相性脱皮をしない仲間がいる。
南極地域にいるトガリヘラムシの一種Glyptonotus acutus は、一度に全部の殻を脱ぐ、単相性脱皮(monophasic molting)をする。
と書いた。
他にもいた。
フナムシ
フナムシも普通、二相性の脱皮をする。
フナムシの一種 Ligia dentipes も通常は二相性脱皮をする。
Santhanakumar, J., et al.Mate guarding behaviour in the supralittoral isopod, Ligia dentipes (Oniscidea) from the Andaman and Nicobar Islands. Invertebrate Reproduction & Development 58.2 (2014): 128-137.
このフナムシのメスの、子どもを育房から孵して数日後に行う脱皮は、単相性脱皮であることが確認された。
脱皮殻は以下のリンクから見られます。
腹側から脱出している。
エビヤドリムシ科の一種
Anderson, Gary, William E. Dale. Probopyrus pandalicola (Packard)(Isopoda, Epicaridea):morphology and development of larvae in culture. Crustaceana 41.2 (1981) 143-161.
エビヤドリムシの Probopyrus pandalicola の幼生時期は、単相性脱皮を行うことがわかっている。
幼生期にカイアシ亜綱を中間宿主として利用し、成体はグラスシュリンプと呼ばれるエビに寄生する。
幼生期は複数のステージがあり、単相性脱皮をする。
ダツエラヌシ
ウオノエのダツエラヌシ Mothocya renardi のマンカ幼生もするらしい。
Panakkool-Thamban, A., & Kappalli, S. (2020). Occurrence of Life Cycle Dependent Monophasic and Biphasic Molting in a Parasitic Isopod, Mothocya renardi. Thalassas: An International Journal of Marine Sciences, 1-10.
二相性脱皮はワラジムシ目だけの形質であり、祖先は単相性脱皮だろう。
ワラジムシ目の単相性脱皮がもっと見つかれば、進化の理由の予想が立てられるかもしれない。
エビヤドリムシ科の論文では、幼生は宿主体内に寄生して動かなくて済むから運動性が極端に落ちる欠点がある単相性脱皮を幼生のみ行っていると書いていた。
トガリヘラムシは南極という特殊な環境が単相性脱皮を生じさせたと書いている。
フナムシの論文は特に記述がない。
おそらく二相性脱皮はカルシウムを失わないようにするため。
ワラジムシの脱皮のステージ、二回脱皮の理由: だんだんダンゴムシ
寄生性だとカルシウムが少なくても保護された環境だから単相性なのかも。
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