ダンゴムシの交尾、フナムシの交尾
以前のページで、ダンゴムシの生殖器について書いた。
ダンゴムシのオスの生殖器は1本のペニスである。
しかしダンゴムシのペニスはとても短い。そのため交尾には、ペニスの先端に2本の第1腹肢内肢を足し合わせて使う。
この内肢の先端をメスの生殖孔に挿入する。先端は膨らんでいたり、小さい棘がついていたりすることが多い。
メスの交尾器はこちら↓
ダンゴムシのメスの交尾器: だんだんダンゴムシ(電子顕微鏡写真のリンクあり)
オレンジの点がメスの交尾器。第5胸節の腹側の足の付け根に左右2つある。
※私もきちんとわかっているわけではなく、どうも以下の話には間違っている部分があるようなので、後でちゃんと調べます。
話半分で読んで下さい。
オカダンゴムシの交尾
以下のURLを参考に書いた。
http://animaldiversity.org/accounts/Armadillidium_vulgare/
前のページのとおり、多くのワラジムシ目はメスの生殖脱皮のときに排卵が起きるため、生殖脱皮のときに交尾する。その交尾期間が来る数日前のメスに、オスは抱きつく。(メスの匂いが変わるらしい)
メスの脱皮が来るまで、オスはメスを抱き続ける。
しかしオカダンゴムシは脱皮に関係なく交尾するらしい。
生殖脱皮(排卵)頻度は、年1~3回である。
メス(下)に抱きつくオス(上)。これは交尾でも求愛でもない。
交尾の時間は短く、数秒で終わると書いてある。
ちょうど交尾の本番の写真
動画はこちら。私が見た時は数分以上と長かった。
終わると、メスは反応しなくなり、しばらく交尾しない。
オスは常に交尾でき、死ぬまでに複数のメスと交尾することができる。
メスは貯精嚢があり、オスの精子を保存でき、何度も交尾することもできる。この場合、複数のオスの精子が貯精嚢の中に溜められる。
コシビロダンゴムシの交尾
コシビロダンゴムシの一種 Venezillo evergladensis の交尾行動を簡単に紹介する。
Johnson, Clifford. "Mating behavior of the terrestrial isopod, Venezillo evergladensis (Oniscoidea, Armadillidae)." American Midland Naturalist (1985): 216-224.
翻訳のミスがあるかも。
多くのワラジムシ目は生殖脱皮のときに交尾する。
しかし、このダンゴムシは関係なく交尾する。
1. オスは触角でメスの匂いを嗅ぐと、激しく動き回る。メスを見つけると触角でメスの頭をつつき始める。メスは動きを止める。丸くなることもある。
2. オスは数十秒もメスの頭をつつき続ける。
3. つつき終わると、メスの上に乗っかる。このとき、メスと90°体がずれる。約1分続く。
4. オスはその後、メスの横側に移動し、上半身を脚でつかむ。
5. メスが前進し、オスの腹肢の上に生殖孔を持っていく。
白:オス、灰色:メス
左から、3→4→5である。
6. オスは第1腹肢、第2腹肢を挿入する。左右の順番は特にない。
上:メス、下:オス、赤:オスの第1腹肢内肢
寝かせてある2本の第1腹肢内肢を立てると思われる。
左右両方の腹肢を合わせて挿入する。
挿入時間は、約45秒である。
8. 再び、2から始める。
9 オスは移動して、反対側のメスの生殖孔に第1腹肢内肢を挿入する。
10. 交尾直後のメスは、オスの交尾行動を誘発させないが、少し経つとオスの交尾行動を引き起こし、交尾するようになる。
処女メスは9割以上の確率でオスに交尾行動を誘発させるが、交尾済みメスは4割以下となる。
交尾済みメスも6割方、オスのアプローチを拒否する。
フナムシの交尾
フナムシのメスも、交尾期(生殖脱皮)が周期的にやってくる。
以下、インドのアンダマン・ニコバル諸島に生息する、フナムシの仲間 Ligia dentipes を紹介する。
Santhanakumar, J., et al. "Mate guarding behaviour in the supralittoral isopod, Ligia dentipes (Oniscidea) from the Andaman and Nicobar Islands." Invertebrate Reproduction & Development 58.2 (2014): 128-137.
Ligia dentipes では、生殖脱皮の後ろ半分と前半分を行う間の30分間のみ交尾が可能となる。
生殖脱皮の周期は、約40日である。
交尾前
1. オスは、成熟している非妊娠メスを待ち伏せし、見つけると上に乗っかり、第1胸脚をメスの甲羅に引っ掛け、 mate guarding を始める。
2. しばらくメスは抵抗する。オスのサイズや体力を確かめるためである。つまりメスより軟弱なオスは交尾できない。
3. 半日~数日に及ぶ配偶者防衛(mate guarding)をして、メスの脱皮を待つ。
この間、他のオスからメスを守る。ときには、力の強い別のオスに奪われることがある。
オスの第1胸脚が、メスの頭部と第1胸節の間に引っ掛っている。
交尾
4. メスが後ろ半分の生殖脱皮(reproductive molting)をする。
これにより、左右それぞれの第5胸脚のつけ根にある(体の腹側の左端と右端に位置する)メスの生殖孔が開き、交尾が開始される。
5. オスは第1~第4胸脚でメスの頭を掴みつつ、第5~第7胸脚でメスの体を持ち上げる。
6. オスはメスの体を斜めに配置し、自分の体の後ろ半分を曲げ、メスの腹側に交尾器(第2腹肢内肢)を持っていき、メスの生殖孔に挿入する。
左が終わったら、メスの体を移動させ、右の生殖孔に挿入する。
白抜き:オス、灰色:メス
左から、配偶者防衛行動中、メスの左の生殖孔にオスの交尾器を挿入、右側に挿入。
交尾行動はリズミカルに行われる。
交尾時間は7~12分である。
交尾後
7. 交尾が終了すると、オスはすぐにメスから離れる。
8. フナムシは乱交型であるため、オスは直ちに新たなメスを探し始める。実験では、1ヶ月最大7匹のメスと交尾した。
メスも、別のオスのアプローチを受け入れ続ける。実験では、最大6匹のオスと再交尾した。(ただし、自然界での複数回交尾の観察例はない。)
しばらくすると、メスはオスを受け入れなくなる。後ろ半分の生殖脱皮の後、6~12時間で、前半分の生殖脱皮が起き、抱卵する。
抱卵から2~3週間後、子どもが孵り、育房から出てくる。
9. 孵化後、前のページで書いたように、メスは特殊な脱皮、単相性脱皮を一回行う。
海産ワラジムシ目コツブムシ亜目のツノオウミセミ Paracerceis sculpta の交尾
Shuster, Stephen M. "Female sexual receptivity associated with molting and differences in copulatory behavior among the three male morphs in Paracerceis sculpta (Crustacea: Isopoda)." The Biological Bulletin 177.3 (1989): 331-337.
この種も生殖脱皮を後ろ半分した段階で交尾する。
αタイプの交尾の姿勢
論文から
白:オス、黒:メス
交尾時間は3~10分、そのうち挿入時間は30秒~数分程度である。
詳しい交尾の流れについてはオスに3種類の形態があるツノオウミセミ: だんだんダンゴムシを参照してください。
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