ダンゴムシの生殖脱皮、生理周期、求愛
交尾と脱皮
ダンゴムシの仲間(海にいる種類も含めて)はメスが脱皮するときに交尾するものが多い。
このときの脱皮は生殖脱皮(parturial molt)と呼ばれ、メスの体を子育てモードに切り替える役割がある。
体を大きくするための脱皮は成長脱皮(growth molt)と呼ばれる。
つまり、成体のメスは常に繁殖ができるわけではない。
脱皮は、一ヶ月~数ヶ月おきに周期的にしか起こらない。(ダンゴムシの種類や栄養状態によって周期は異なる。)
冬など栄養状態が悪い時期は止まる。
大人のオスは常に交尾ができるが、メスは卵を抱える性質により常に交尾ができるとは限らない。
よって、オスは脱皮直前のメスを探すために必死になる。
脱皮と排卵
生殖脱皮と同調して、卵巣からの排卵が起きる。
つまりダンゴムシは排卵も周期的である。
ダンゴムシやワラジムシは精子を保持できるので脱皮時以外に交尾するが、
精子を体内に保持できないフナムシなどが生殖脱皮の直前に交尾するのは、このためである。
オスは、メスに脱皮が起きそうかどうかを匂いで知ることができる。
メスは脱皮の数日前から体臭(おそらく甲羅の表面に分泌されているの炭化水素の成分構成?)が変化するとされ、オスはそれを触角で感知してメスを捕まえていると、昔から考えられている。
メスが交尾できる間は短いので、オスは事前にメスを捕まえ、脱皮をじっと待つのとされる。
個人的にはオカダンゴムシを観察して、匂い成分の炭化水素は不揮発性で、触角で甲羅に触らないと感知できないのだと思った。
しかし、コシビロダンゴムシの論文(次のページ)では揮発した匂いにオスが反応するみたいに書いてあった。
メスの体のイメージ
黄色:卵巣(体内)、オレンジ:生殖孔(腹側に開く)、点線:育房(腹側)、直線:胸節の境
第5胸節の腹側にある左右の生殖孔から精子が中に入り、卵と受精するか、貯精嚢(受精嚢?)に移動する。
脱皮によって生殖孔と育房は形成され、交尾と妊娠が可能な状態に一時的に変化する。
生殖孔はしばらくすると閉じる。この間(数時間?)は交尾が可能となる。
一回交尾を終えてから、再び脱皮が起きるまでメスは交尾をしない。
(※甲殻類はふつう第6胸節にメスの生殖孔ある。ダンゴムシやヨコエビは本来の第1胸節が頭部と融合しているため、第5胸節にあるように見えている。)
メスの生殖孔の写真はこちら
ダンゴムシのメスの交尾器: だんだんダンゴムシ
交尾の画像はこちら
またダンゴムシの交尾を見た。: だんだんダンゴムシ
未受精卵は左右の卵巣から出て受精し、腹側にある育房と呼ばれる袋の中に移動する。
育房内で卵は成長し、数週間ほどで孵化してマンカ幼生が一斉に外に出てくる。
排卵しても受精しなかった場合、未受精卵は再吸収される。
(図については、
Suzuki, Sachiko. "Reconstruction of the female genitalia at molting in the isopod crustacean, Armadillidium vulgare (Latreille, 1804)." Crustacean research 31 (2002): 18-27.
Appel, Carina, Aline F. Quadros, and Paula B. Araujo. "Marsupial extension in terrestrial isopods (Crustacea, Isopoda, Oniscidea)." Nauplius 19.2 (2011): 123-128.
(この内容に関する論文はいろいろ出ていますが、どれもとても難しい内容でした。このページと次のページの内容が正しいことを保証できないです。実際はもっと研究が進んでいます。)
オカダンゴムシの求愛…じゃなくて
ダンゴムシが以下の行動をしているシーンをよく見かける。
下:メス、上:オス
これは交尾ではない。
交尾ができる時期のメスに、オスが抱きついているところである。
求愛と書いたが、脱皮待ちと、他のオスからの防衛をする配偶者防衛である(調べたらそうではないかもしれない)。
次のページで、交尾の流れを紹介する。
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