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2016年12月 3日 (土)

ダンゴムシの移動する距離が長すぎる

日本にはモリワラジムシと呼ばれるワラジムシがいる。
Photo
モリワラジムシの仲間



トゲモリワラジムシ属の研究


日本で見られる以下のトゲモリワラジムシが、実は Burmoniscus kathmandius (※)という種であった。

アオキモリワラジムシ Burmoniscus aokiiオガサワラモリワラジムシ Burmoniscus boninensis、ダイトウモリワラジムシ Burmoniscus daitoensis、ハチジョウモリワラジムシ Burmoniscus hachijoensis、ヤマトモリワラジムシ Burmoniscus japonicus、カゴシマモリワラジムシ Burmoniscus kagoshimaensis、ムロトモリワラジムシ Burmoniscus murotoensis、オキナワモリワラジムシ Burmoniscus okinawaensis、シバタモリワラジムシ Burmoniscus shibatai、タナベモリワラジムシ Burmoniscus tanabensis、ワタナベモリワラジムシ Burmoniscus watanabei

詳しくは土と生き物、もしくはZookeysの論文を読んでください。

Burmoniscus kathmandius の和名が、このサイトではアジアモリワラジムシとなっている。


さらに、 Burmoniscus kathmandius は日本全国でほとんど同じ遺伝子配列であることことも報告している。

海洋島の八丈島、小笠原ですら本州と遺伝子が同じ。


文章にすると単純な内容になってしまうが、これを証明するのはとても大変だったと思う。




ダンゴムシの歩ける距離が短すぎる。: だんだんダンゴムシ

ダンゴムシたちは移動能力が高くないはず。

しかし、本当に移動できないとしたら、遺伝子は突然変異が蓄積して、場所ごとに少しずつ違う配列になる。

同じということは、このワラジムシはごく最近に移動したことになる。

オカダンゴムシのように人間が移動させた?


人が持ち込んだ可能性もあるが、自然に起きるとしたら3つあるとされる。




長距離の移動手段


1.台風で飛ばされる

小さい子どもが一匹単位なら飛ぶかもしれないが、終着地にコロニーを築くのは厳しいかも。

運が良ければいける?



2.海面を漂う浮遊物に乗って分散

地面に落ちた木材に、ダンゴムシ達が隠れていることがある。

木材は長い間浮けるし、木材に潜る虫は海洋島にも多いとされる。

大洪水や津波などで流出した、ダンゴムシ付きの植物片が海を漂うのかもしれない。


実際、海面に流出した植物体からの発見例がある。

海を漂うコシビロダンゴムシの発見例: だんだんダンゴムシ



3.渡り鳥にくっつく

くっつき方には2つある。


1.endozoochory:消化管の中を利用する。ダンゴムシは無理

例えば、ハクチョウの糞には、水草 Azolla 属の胞子が高頻度で見られる。

Green, A. J., Jenkins, K.M., Bell, D., Morris, P. J., & Kingsford, R. T. (2008). The potential role of waterbirds in dispersing invertebrates and plants in arid Australia. Freshwater Biology, 53(2), 380-392.


2.ectozoochory:体表にくっついて移動。できそう

水生ヨコエビが、水鳥の羽毛に潜りこんで、数キロは分散している可能性を示す研究がある。

Rachalewski, M., Banha, F., Grabowski, M., & Anastácio, P. M. (2013). Ectozoochory as a possible vector enhancing the spread of an alien amphipod Crangonyx pseudogracilis. Hydrobiologia, 717(1), 109-117.

陸に生きるダンゴムシなら耐えられそう。

渡り鳥の羽に落ち葉が挟まっていることがあるの?





ところで、線虫のCaenorhabditis elegans がダンゴムシやワラジムシを分散に利用しているって本当?

 

 

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