ヘラムシの亜鋏状の脚
陸のダンゴムシの話が続いたけれど、今回は海の話。
ヘラムシは海藻によく付いているダンゴムシの仲間。
稀に水族館に展示されている。
ヘラムシ亜目の種を決めるとき、胸脚が亜鋏状かどうかが重要になるらしい。
ウミナナフシの分類でも使う。
subchelate
「亜鋏状」は英語で、subchelate という。
分類で見るよく分からない単語は、Crustacea Glossaryを見るとわかることがある。
Kensley, B., & Schotte, M. (1989). Guide to the marine isopod crustaceans of the Caribbean.
の中には、
SUBCHELATE. Having a subchela, forming a pincerlike structure, especially by the dactylus folding back on the propodus.
ペンチのような構造、指節によって前節の上が折り畳み式になっている。(?。うまい日本語訳がわからない。)
指節と前節の間の関節が動いて、指節が折りたたまれることで、前節を土台にして、物が挟める構造になっていることを指すようだ。
chelate
鋏状 chelate の脚は、同様に、発達した前節と可動性の指節で、折り畳める構造になっている。
subchelate と chelate の違い
鋏状とは、
the propodus and dactylus forming a pincerlike structure wherein the
latter articulates submedially on the former to produce a "moveable and
fixed finger" arrangement. …[Wetzer et al. 1997]
と書いてある。
指節は、前節の内側の関節によってくっつき、”可動指と固定指”の構造をつくる。
カニのはさみのことらしい。
亜鋏状は、
Unlike the case in a true chela, a fixed finger is not developed and the
dactylus bites either against an enlarged edge of the propodus or
against projecting spines … [Warner, 1977]
と書いてある。
fixed fingerがなく、指節は前節の縁と噛み合う。
カマキリの鎌のこと。
Wikipediaのはさみ(動物)に図が載ってた。
ワラジムシ目では、ほとんどが亜鋏状の胸脚であり、鋏状のものはほとんどないそうです。
ヘラムシ亜目の科ごとの胸脚
ヘラムシ科 Idoteidae、ホソヘラムシ科 Holognathidae :第1胸脚のみ亜鋏状
トガリヘラムシ科 Chaetiliidae :第1胸脚または、第1~3、第1~5、第1~6胸脚が亜鋏状
オニナナフシ科 Arcturidae :第1胸脚 gnathopod、第2-4胸脚 elongated、第5-7胸脚 歩行用 (第2-4胸脚は稀にないことがある)
アフリカヘラムシ科 Holidoteidae、カンカイオニナナフシ科 Antarcturidae、ゴウシュウオニナナフシ科 Austrarcturellidae、ツマリオニナナフシ科 Rectarcturidae :第1胸脚 gnathopod、第2-4胸脚 elongated、第5-7胸脚 歩行用
カワリオニナナフシ科 Xenarcturidae :第1胸脚 gnathopod、第2, 3胸脚 elongated、第4-7胸脚 歩行用
オニナナフシモドキ科 Arcturididae :第1胸脚 gnathopod、第2-7胸脚 歩行用
ニセヘラムシ科 Pseudidotheidae :第1胸脚 gnathopod、第4-7胸脚 歩行用
gnathopodの意味がわからない…
他にヘラムシの科レベルの分類で重要なのは、頭部と第1胸節が融合しているかどうかと、第1腹肢の形態の2つらしいです。
| 固定リンク
「海のダンゴムシ:ヘラムシ」カテゴリの記事
- 銚子でヘラムシを捕まえた(2020.07.28)
- エサによって消化酵素を調節するヘラムシ(2019.01.07)
- ヘラムシは体の色を周りと合わせるらしい(2022.06.09)
- ヘラムシの亜鋏状の脚(2017.07.24)
- 最終氷期の後、海のワラジムシ目の数が急増している(2018.07.23)
コメント