ダンゴムシの病気:重金属汚染
ダンゴムシには消化器系の臓器の一つに肝膵臓 hepatopancreas (ヘパトパンクレアと読む?)がある。
消化酵素の分泌、消化されたものの吸収の役割がある。
さらに、生命活動に必須な金属元素を貯める、取り込んでしまった有害な金属を封じるなどの役割ももつ。
このミネラルの調節機構のおかげでダンゴムシは金属汚染に強い。
ダンゴムシのhepatopancreasの位置のイメ―ジ(斜め線の部分)
等脚類は体の真ん中に消化管が走り、胃のあたりから細長い袋状のhepatopancreasがある。
ダンゴムシやワラジムシ、ハマダンゴムシ、ヒメフナムシは hepatopancreas が4本あり、フナムシは6本である。
B細胞とS細胞という役割が違う細胞からなる。
ダンゴムシの重金属汚染
Hopkin SP, Martin MH, 1984 Heavy metals in woodlice. In: Sutton, S.L., Holdich, D.M. (Eds.), The Biology of Terrestrial Isopods. The Zoological Society of London. Clarendon Press, Oxford, pp.143–166.
エサが重金属に汚染されている場合、体に高濃度で蓄積する。
ダンゴムシの体内汚染レベルは、だいたいエサのレベルに比例する。
体全体に金属が溜まるわけではなく、乾重比で5%ぐらいに過ぎないhepatopancreasに体内の8~9割の金属が集中する。
亜鉛、カドミウム、鉛、銅はhepatopancreasに特に溜まる。
hepatopancreasの亜鉛濃度が1.5%を超えると、もしくはカドミウム濃度が0.5%を超えると死に至る。
健康な個体のhepatopancreasは黄~茶色だが、高濃度の重金属で汚染されると白からグレーに変色し、形もおかしくなる。
排出はできない。(できると書いている本もある)
イギリスの鉱山跡地や精錬所周辺で汚染ダンゴムシが見られるらしい。
日本でも見られるのだろうか?
母体に蓄積した金属が子どもに移行することはない。
昆虫よりダンゴムシの方が金属が蓄積しやすく、
土壌の汚染レベルの調査やバイオレメディエーションに使えるかもしれないと書いてある。
(バイオレメディエーションとは汚染された土や水を生物の力で浄化すること。…地表にしかいないダンゴムシにできる?)
追記
日本のフナムシを調べて、フナムシの重金属やダイオキシンの含有量は海岸の汚染レベルを反映しているという研究があった。
Honda M, et al., 2021 Contamination of Heavy Metals, Polychlorinated Dibenzo-p-Dioxins/Furans and Dioxin-Like Polychlorinated Biphenyls in Wharf Roach Ligia spp. in Japanese Intertidal and Supratidal Zones. Applied Sciences, 11, 1856.
でもこれMDPIか…
金属の吸収効率
海水はミネラルが豊富。しかし、陸にいるとミネラルが不足しがち。
海にいる等脚類は海水から腹肢を通して金属を吸収するとされるが、陸にいるダンゴムシなどは食べ物から効率良く金属を吸収する。
例えば、ダンゴムシの血液は銅を含むが、陸上に銅は極めて少ない。
そのため、陸にいるダンゴムシやワラジムシの腸は銅の吸収効率が高いとされる。
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コメント
ワタジムシが、加水分解性のタンニンを多く含む落葉を好んで?食べています。この理由として、タンニンを分解できるCuを含む酵素を利用していると聞きましたが(金子先生2007年)、どのようにお考えか、お教えください。メールいただけると有り難いです。小池孝良@作物栄養学研究員北大
投稿: 小池孝良 | 2022年2月19日 (土) 11:59
等脚目の酵素の情報は少ないので、ワラジムシの消化酵素のことはよくわからないです。どのようにタンニンの悪影響を回避しているのか興味深いですね。
投稿: だんだんダンゴムシ | 2022年5月 3日 (火) 00:02
ダンゴムシは土壌汚染を改善してくれますでしょうか?
投稿: 竹下 | 2024年5月 6日 (月) 18:51