« 2017年8月 | トップページ | 2017年10月 »

2017年9月

2017年9月23日 (土)

ワラジムシを食べるクモ: イノシシグモ

ダンゴムシやワラジムシは硬い甲羅がある割に中身が少なく、ヒョウタンゴミムシのようにバリバリ食べる動物は少ない。

しかし、イノシシグモは器用に食べることが知られる。

イノシシグモ属Dysderaに属するクモは、ダンゴムシやワラジムシをよく食べる傾向があるらしい。
Dysdera crocata (male).jpg
By © Hans Hillewaert, CC BY-SA 4.0, Link

wikiの写真



イノシシグモは日本にいる?


英語版Wikipediaによると日本にいる。

日本産クモ類(東海大学出版会)を読むと、初記録以来採集例がないとある。

日本の侵略的外来種の検討対象種リストに入っているが未定着となっている。


日本産土壌動物(東海大学出版部)によると、人為的に持ち込まれたクモらしい。
Imgp1235_2
Imgp1236
日本産土壌動物 第2版 838-839ページ


過去に侵入して定着できなかったのかな?

定着に成功されたら、免疫のない日本産ダンゴムシは危ないかもしれない。

原産地の地中海周辺では人家周辺に普通に出没するらしい。クモの形をよく覚えておこう。



獲物の捕獲


Pollard, S. D. (1986). Prey capture in Dysdera crocata  (Araneae: Dysderidae), a long fanged spider. New Zealand journal of zoology, 13(1), 149-150.

網を張らず、夜に獲物を探し回る。

イノシシグモは1対の大きな鋏角を持っている。

鋏角が大きいほどダンゴムシを食べ、短いとあまり食べない。

英語版Wikipediaには、つかむと噛まれることがあり、かゆみが生じることがあると書いてある。


ダンゴムシの柔らかい腹側から片側の鋏角を刺し、もう一方の鋏角で背中側から抑えつける。

刺した鋏角から毒液を注入して捕食する。


捕食実験をすると、他の小昆虫と比べてオカダンゴムシやワラジムシを好んで食べるわけではないとする研究もある。

Pollard, S. D., Jackson, R. R., Van Olphen, A., & Robertson, M. W. (1995). Does Dysdera crocata (Araneae Dysderidae) prefer woodlice as prey?. Ethology ecology & evolution, 7(3), 271-275.


しかし、栄養学的な実験で、ダンゴムシ食に特化しているという研究もある。

ŘEZÁČ, M., & PekAR, S. (2007). Evidence for woodlice‐specialization in Dysdera spiders: behavioural versus developmental approaches. Physiological Entomology, 32(4), 367-371.

オカダンゴムシ+ホンワラジムシとキイロショウジョウバエをエサにして飼うと、ハエを多く食べた。

しかし、エサがハエだけよりダンゴムシとワラジムシをやったグループの方が成長が良い、と書いてある。



ワラジムシの交替性転向反応の変化


Carbines, G. D., Dennis, R. M., & Jackson, R. R. (1992). Increased turn alternation by woodlice (Porcellio scaber) in response to a predatory spider, Dysdera crocata.. International journal of comparative psychology.

イノシシグモに出会うと、ワラジムシ Porcellio scaber の交替性転向反応はどうなるか?

交替性転向反応とは、壁にぶつかるたびに右、左と曲がる方向を変える行動のことで、天敵回避に使うと言われる。


T字を繋げた迷路をつくる。

1
イノシシグモを二酸化炭素で麻酔して、スタート地点(S)に置いたワラジムシ目掛けて落とす。

ワラジムシがちゃんと右左に進んだか、を計測。


結果、クモに触れるとGに行く(きちんと右→左→…を繰り返す)ワラジムシが多くなった。

ハエや綿を使った場合は、きちんと繰り返さない個体が多い。

オカダンゴムシやワラジムシにとって、イノシシグモは恐ろしい天敵と本能的に知っているのだろう。

日本に来たオカダンゴムシは天敵がいなくて鈍ってそう。


日本のクモは偶発的に食べることはあっても、積極的に食べるクモはいないようだ。
Photo
網にかかったワラジムシを食べるクモ

青森県のオオヒメグモのエサは15%がワラジムシという研究はあった。

TANAKA, K. (1989). Seasonal food supply for the house spider, Achaearanea tepidariorum (Araneae, Theridiidae) in northern Japan. 昆蟲, 57(4), 843-852.









関係ない話

久しぶりに展翅をした。

細いテープしかなくてこうなった。
Photo
関東のアカボシゴマダラは要注意外来生物

| | コメント (0) | トラックバック (0)

« 2017年8月 | トップページ | 2017年10月 »