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2018年12月

2018年12月25日 (火)

ソコウオノエ

前のページの続き
Imgp2244

このウオノエがシマアジノエではないかとのことで検討した。



シマアジノエ Ceratothoa trigonocephala

Hadfield, K. A., Bruce, N. L., & Smit, N. J. (2014). Review of the fish parasitic genus Ceratothoa Dana, 1852 (Crustacea, Isopoda, Cymothoidae) from South Africa, including the description of two new species. ZooKeys, (400), 1.

頭部が三角形、第1-4胸節はほぼ同じ長さ、第1胸節の中心背面に隆起、第1胸節の前方外側は短くはっきりと円い、尾肢が腹尾節後端を通り越していない。

ことで同定できると書いてある。

合っているような気もするが違うような。



歌魚風月
様はソコウオノエの可能性にも触れていたので、こちらも確認した。



ソコウオノエ Ceratothoa oxyrrhynchaena

Martin, M. B., Bruce, N. L., & Nowak, B. F. (2013). Redescription of Ceratothoa carinata (Bianconi, 1869) and Ceratothoa oxyrrhynchaena Koelbel, 1878 (Crustacea: Isopoda: Cymothoidae), buccal-attaching fish parasites new to Australia. Zootaxa, 3683(4), 395-410.

オーストラリア産のキダイ属の一種 Dentex spariformis の口内から捕れたソコウオノエが載っている。

節や脚の形を見たら、だいたい同じ。


Imgp2241


Imgp2235
第7胸脚



これはシマアジノエではなく、ソコウオノエの可能性が高い。

頂いた4匹全てソコウオノエのようです。

しかし、これで終わりではなかった。



Martin et al. (2013)はYamauchi (2009)に触れていた。

Yamauchi (2009)は日本産のアカムツから捕ったソコウオノエが載っている。



2つの論文で書いていることが違っていた。

第2触角が、7節(Yamauchi)、9節(Martin)

尾肢内肢と外肢が、違う長さ(Yamauchi)、同じ長さ(Martin)

第1腹肢内肢は、外肢と同じ長さ(Yamauchi)、外肢より小さい(Martin)

maxillipedの棘が、9本(Yamauchi)、5本(Martin)



稀によくある。

この違いの原因は、個体差、成長、地域差、可塑性、実は別種、のどれだ。



とりあえず、Martin et al. (2013)と全ての項目で合致した。

なので、頂いたウオノエの名前は、「Martinらによって2013年に発表された論文に基づくソコウオノエ」Ceratothoa oxyrhynchaena sensu Martin et al., (2013)とすべきなのかもしれない。



Imgp2233
頂いたウオノエのメス2匹のうち1匹は、第1腹肢内肢が外肢より小さい。

ただし、もう1匹は内肢と外肢のサイズが同じだった。

思ったより闇が深い。





それにしても、ウオノエは種類が多い。

なぜ魚によって違うウオノエが寄生しているんだろう?

魚の血液は種によって違う毒があって、ウオノエは種ごとに違う毒に適応している?

魚に色んな毒を注射したら、ウオノエが寄生しない魚になるのかな?

 

 

 

 

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ウオノエ科ヒゲブトウオノエ属

歌魚風月様からウオノエを雌雄2匹ずついただきました。
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メス


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オス


胸脚が全て湾曲してるのでウオノエ科。
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メスの裏側



シマアジノエ Ceratothoa trigonocephala ではないかとのことでした。

まずシマアジノエの属するヒゲブトウオノエ属か確認した。



ヒゲブトウオノエ属 Ceratothoa

ヒゲブトウオノエ属の形は、

・頭部が三角形、触角の基部が隣接する、第1腹節が最も狭い、長さは幅の2.1-2.9倍、尾肢はほぼ同じで腹尾節の後端まで伸びる、第1胸節の前方外側がlobっている。

・触角の基部が隣接する、第1胸脚が最も長い、第4-5胸節が最も幅広、尾肢の内肢と外肢の長さがほぼ同じで、同じ長さか腹尾節の後端まで伸びる、第1胸節の前方外側がlobっている。

で同定できると次のページで挙げた論文に書いてある。



触角の基部が太くて接するのが特徴で「ヒゲブト」のようだ。

ウオノエ属 Cymothoa やエラヌシ属 Mothocya は第1触角の基部が著しく幅広にならないので、第1と第2触角どうしが離れている。


Imgp2230
これはヒゲブトウオノエ属でしょう。



次のページへ。





ウオノエ科の一部の属への検索表

Martin, M. B., Bruce, N. L., & Nowak, B. F. (2016). Review of the fish-parasitic genus Cymothoa Fabricius, 1793 (Crustacea: Isopoda: Cymothoidae) from Australia. Zootaxa, 4119(1), 1-72.

触角の基部が太くて接する特徴は他の属にもあるみたい。



Cancer 25号に日本のウオノエ科の一覧がある。

日本では、ウオノギンカ属Anilocra、ウオノコバン属Nerocila、ウオノドウカ属Renocila、カイテイギンカ属Preopodias、ヒゲブトウオノエ属Ceratothoa、エビスエラヌシ属Cterissa、ウオノエ属Cymothoa、エルウオノエ属Elthusa、カタウオノエ属Glossobius、エラヌシ属Mothocya、マンマルウオノエ属Ryukyuaがいる。

ウオノギンカ属、ウオノコバン属、ヒゲブトウオノエ属、ウオノエ属、エルウオノエ属がメジャーな属。

Smit, N. J., Bruce, N. L., & Hadfield, K. A. (2014). Global diversity of fish parasitic isopod crustaceans of the family Cymothoidae. International Journal for Parasitology: Parasites and Wildlife, 3(2), 188-197.


ウオノエ属の特徴

Hadfield, K. A., Bruce, N. L., & Smit, N. J. (2013). Review of the fish-parasitic genus Cymothoa Fabricius, 1793 (Isopoda, Cymothoidae, Crustacea) from the southwestern Indian Ocean, including a new species from South Africa. Zootaxa, 3640(2), 152-176.


エラヌシ属の特徴

Hadfield, K. A., Sikkel, P. C., & Smit, N. J. (2014). New records of fish parasitic isopods of the gill-attaching genus Mothocya Costa, in Hope, 1851 from the Virgin Islands, Caribbean, with description of a new species. ZooKeys, (439), 109.


ウオノハラモグリ属の特徴

Martin, M. B., Bruce, N. L., & Nowak, B. F. (2014). Redescription of Ichthyoxenus puhi (Bowman, 1962)(Isopoda, Cymothoidae), parasite of the moray eel Gymnothorax griseus (Lacépède, 1803) from Mauritius. Crustaceana, 87(6), 654-665.

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グソクムシ科、スナホリムシ科、スナホリムシダマシ科、ウオノエ科、ニセウオノエ科

海にいるダンゴムシ型のワラジムシ目のうち、

腹尾節に鰓室ができるのは、コツブムシ亜目。

できずに板状なのはウオノエ亜目。

鰓室の写真はワラジムシ目の亜目の特徴: だんだんダンゴムシ



ウオノエ亜目は4つの上科に分けられる。

ウオノエ亜目
┣ウミナナフシ上科 Anthuroidea
┣エビヤドリムシ上科 Bopyroidea
┣ウオノエ上科 Cymothooidea
┗カクレヤドリムシ上科 Cryptoniscoidea



ウミナナフシは昆虫のナナフシのように体が細長い。(オニナナフシはヘラムシ亜目)

エビヤドリムシとカクレヤドリムシは甲殻類に寄生し、体の構造は退化している。

カクレヤドリムシは胸脚もほとんどないことが多い。



エビヤドリムシ上科スナモグリヤドリムシ
Imgp5109


カクレヤドリムシ上科ウミホタルガクレ
Imgp1443



ウオノエ上科の分類

ウオノエ上科は形がダンゴムシに近い、ずんぐりむっくり。

肉食や屍肉食もいるが、魚類やエビ類に寄生する種が多い。

魚の死体を食べる種が寄生性に進化したらしい。

寄生性になると体がツルツルになり、脚が鋭く、口器にかぎ爪のような棘ができる。




ウオノエ上科には9つの科がある。

ウオノエ上科
┣Aegidae グソクムシ科
┣Anuropidae オナシグソクムシ科
┣Barybrotidae
┣Cirolanidae スナホリムシ科
┣Corallanidae ニセウオノエ科
┣Cymothoidae ウオノエ科
┣Gnathiidae ウミクワガタ科
┣Protognathiidae
┗Tridentellidae スナホリムシダマシ科



BarybrotidaeとProtognathiidaeは日本で見つかっておらず、種数も少ない。

ウミクワガタ科は第1胸節は頭部と融合し第7胸脚がないので、胸脚が5対に見える。




オナシグソクムシ科 Anuropidae

千葉県立中央博物館で見た。
Imgp98612
”浮力を得るため、ワックスを蓄積している。””外骨格はやわらかい。”

オナシグソクムシはダイオウグソクムシに次ぐ大きさ。

深海を漂っている。

同定は尾肢が腹肢のようになる点でできる。尾肢も呼吸器官に進化したとされる。

クラゲの中に寄生する?ので、酸欠にならないようにしているのかも。




グソクムシ科、スナホリムシ科、ニセウオノエ科、ウオノエ科、スナホリムシダマシ科の見分け方

グソクムシ科、スナホリムシ科、ニセウオノエ科、ウオノエ科、スナホリムシダマシ科は似ている。

違いがわかりにくく、同定を間違えることがある。

Nob!!の勝手に甲殻類のウオノエ類の顎脚に顎脚が違うと書いてある。



Bruce, N. L. (1985). Calyptolana hancocki, a new genus and species of marine isopod (Cirolanidae) from Aruba, Netherlands Antilles, with a synopsis of Cirolanidae known from the Caribbean and Gulf of Mexico. Journal of crustacean biology, 5(4), 707-716.

ここの検索表。(日本語訳が怪しい)

1.全ての胸脚が太く湾曲したフック状━━ウオノエ科
1.少なくとも第4-7胸脚は歩行用━━━━2
2.maxillipedの頂端に棘あり━━グソクムシ科
2.maxillipedの頂端に棘なし━━3
3.mandibleのincisorは広く、3歯。maxilluleの内肢は太い棘が3つ━━スナホリムシ科
3.mandibleのincisorは狭い。maxilluleの内肢は痕跡的 or 欠損━━━━4
4.maxilluleが先端が徐々に尖り、棘がある。maxillipedは薄いenditeがある。━━スナホリムシダマシ科
4.maxilluleがはっきりと三日月型。maxillipedにenditeがない━━━━━━━━━ニセウオノエ科



ウオノエ科は全ての脚がフックになっている。

まさにウオノエであり、魚に寄生するとき確実にしがみつける。

歌魚風月様から頂いたウオノエ科ウオノコバン
Imgp1132



スナホリムシ科は全ての脚が歩行用や遊泳用になっている。

スナホリムシ科オオグソクムシ
2
和名がややこしく、オオグソクムシとダイオウグソクムシはスナホリムシ科であり、グソクムシ科ではない。



グソクムシ科、スナホリムシダマシ科、ニセウオノエ科は前方3対がフックで、後方4対がフックでない。

グソクムシ科の一種
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グソクムシ科 Aegidae

mandibleは可動葉片や臼歯状突起がなく、鋭利な刃物状になっている。maxilluleは先端に太く湾曲した棘がある。maxillipedが頑丈なフック状。

第1-3胸脚が著しく太くフック状。第4-7胸脚は湾曲せず歩行用で細い。

日本のグソクムシ科はNob!!の勝手に甲殻類さんに一覧がある。

属の検索表はグソクムシ科Aegiochus属: だんだんダンゴムシ



スナホリムシ科 Cirolanidae

Bruce, N. L. (1986). Cirolanidae (Crustacea: Isopoda) of Australia. Australia: Australian Museum.

眼は小さい。頭楯あり。mandible は3歯、可動葉片、bladeのような臼歯状突起、鬚がある。maxillule は11-14の棘が外肢にあり、3-4の毛が内肢にある。maxillaは鬚と外肢があり、長い毛がある。maxilliped palpは5節、基節内葉あり。

第1-3胸脚は歩行用、突き出た硬い爪がある。第4-7胸脚は歩行用か遊泳用。

腹肢は面的。

オオグソクムシBathynomus doederleini やヒメスナホリムシ Excirolana chiltoni などがいる。



ニセウオノエ科 Corallanidae

強く曲がったフック状のmaxilluleを持つ。maxillaはあるが、痕跡的なことが多い。maxillipedの基節内葉は欠ける。胸節、腹節、腹尾節は毛深い。目がスナホリムシ科より大きい。

エビノコバン Tachaea chinensis などがいる。

属への検索表はエビに寄生するエビノコバン: だんだんダンゴムシ



ウオノエ科 Cymothoidae

Brusca, R. C. (1981). A monograph on the Isopoda Cymothoidae (Crustacea) of the eastern Pacific. Zoological Journal of the Linnean Society, 73(2), 117-199.

眼は幼生時に大きく、成熟すると小さくなる。腹節は5節(例外あり)。maxillipedは2-3節。maxilliped、maxillule、maxillaの先端には太くて湾曲した棘がある。mandibleは可動葉片、毛、臼歯状突起がなく、鋭利なカッターのようになる。

第1-7胸脚が著しく太く湾曲し、フック状。

腹肢原節が発達し1肢3枚に見えることがあり、内肢はひだがあることがある。

属は40もあり、分類は難しい。

Cancer 25号に日本のウオノエ科の一覧がある。

一部の属はヒゲブトウオノエ属: だんだんダンゴムシに書いた。



スナホリムシダマシ科 Tridentellidae

Delaney, P. M., & Brusca, R. C. (1985). Two new species of Tridentella Richardson, 1905 (Isopoda: Flabellifera: Tridentellidae) from California, with a rediagnosis and comments on the family, and a key to the genera of Tridentellidae and Corallanidae. Journal of Crustacean Biology, 5(4), 728-742.

maxillipedに長い底節があり、鬚の第3節を超え、enditeがある。maxilluleは先端が徐々に尖り、先端に3~5本のフック状の棘があり、それより小さい棘が傍にある。maxillaは毛と棘が多いが、湾曲した棘やフック状の毛はない。

第1-3胸脚は太く湾曲してフック状。第4-7胸脚は歩行用。

腹肢は薄い。

スナホリムシダマシ属のみがある。





分け方は人によって違う。

ウオノエ亜目は分類の変更がよくあるらしいので、書いてあることは古いかもしれない。

形態用語の説明は以下。

オオグソクムシの付属肢(前編): だんだんダンゴムシ

オオグソクムシの付属肢(後編): だんだんダンゴムシ

「海洋と生物」186号の日本産等脚目甲殻類の分類 (1)にも詳しく書いてある。

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