日本の地下水性ミズムシの種類一覧
日本全国の川や地下水からはミズムシ Asellus hilgendorfii が見られる。
ダンゴムシの仲間で、都会の汚れた水でも見られる。
地下水や洞穴水には別のミズムシも知られていて、
東京都衛生研究所(現東京都健康安全研究センター)の松本浩一により、1960年前後に少し報告がある。
井戸水の汚れ具合の観点から生物を見ていたらしい。
このページでは、日本の地下水性ミズムシについてまとめてみた。
小さいながら眼がある種もいるので、純粋な地下水生ではない種も含まれているかもしれない。
日本で記録がある地下水性ミズムシは現在24種であり、日本固有種も多い。
北海道から奄美まで記録がある。
地下水を手に入れることが難しいので、記録が少ない種類ばかり。
例えば、1961年に東京都中野区で発見されたメクラミズムシはその後ずっと記録がない。
東京は地下水が豊富で、メクラミズムシのような東京固有種もいくつも知られるが、
開発や汚染が激しい人口密集地なので、今がどうなっているのか気になる。
以下の学術論文も参考にした。
齋藤暢宏、伊谷行、布村 昇 2000 日本産等脚目甲殻類目録(予報) 富山市科学文化センター研究報告 富山市科学文化センター 23 11-107
布村昇 2015 四国産等脚目甲殻類 Kuroshio Biosphere 11: 1–40
古い文献に載っているだけの種もあり、調べるのが苦しい。
(古い学会誌はオープンアクセス化してくれ~)
ウミミズムシ科Janiridae
ウミミズムシ科の腹肢は左右がくっついて1枚となり、縫合線が見える。
この科は海に多いが地下水生もいる。
メクラミズムシモドキ属 Mackinia Matsumoto, 1956
日本、朝鮮半島、ロシアに分布する。
・メクラミズムシモドキ Mackinia japonica Matsumoto, 1956
体長4mm以下、眼がなく白くて半透明なミズムシ。
東京都立川市(高松町と砂川町か?)の井戸水から最初に見つけている。
その後、本州、四国、九州の各地の淡水の井戸からも発見されている。
写真(pdf)https://foundation.tokyu.co.jp/environment/wp-content/uploads/2011/02/07a6ed8f7fb9061aad9377140a79da271.pdf
採集しているyoutuber
・チョウセンメクラミズムシモドキ M. coreana Matsumoto, 1967
Matsumoto K. 1970 Isopod crustaceans found in the subterranean waters of the Islands of Tsushima. Bulletin of the National Science Museum Tokyo 13 231-239.
対馬と韓国の井戸から見つかる。
朝鮮半島にはM. coreana、M. troglodytes、M. birsteiniが、ロシアにはM. continentalisがいる。
ミズムシ科Asellidae
左右の腹肢が分離している。
ニッポンミズムシ属 Nipponasellus Matsumoto, 1962
小判状の体型。
・Nipponasellus aioii (Chappuis, 1955)
Chappuis 1955 Remarques générales sur le genre Asellus et description de quatres especes nouvelles. Notes Biospéléologiques 10 163-182
Matsumoto K. 1966 Studies on the subterranean Isopoda of Japan, with notes on the well-water fauna of Japan. (Part 1). Studies on the subterranean Isopoda of Japan. (No. 2). Anual Rept. Tokyo-to Lab. Med. Sci. 23 77-103
兵庫県相生市の井戸水から見つかり、高知県からも見つかる。
・Nipponasellus hubrichti (Matsumoto, 1956)
東京都八王子市の井戸水から見つかる。
・Nipponasellus kagaensis (Matsumoto, 1958)
Matsumoto K. 1958 A new subterranean water-isopod: Asellus kagaensis sp. nov. from the wells of Japan. Bulletin of the Biogeographical Society of Japan 20: 19-24.
・Nipponasellus takefuensis (Matsumoto, 1961)
Matsumoto K. 1961 The subterranean isopods of Honshu with descriptions of four new species. Bulletin of the Biogeographical Society of Japan 22: 45-67.
・Nipponasellus tonensis (Matsumoto, 1961)
ウエノミズムシ属 Uenasellus Matsumoto, 1962
一属一種。Nipponasellusよりも若干細長く、尾肢が腹尾節の真後ろ先端に2本接して生える。
Uenasellus iyoensis (Matsumoto, 1960)
Matsumoto K. 1960 Subterranean isopods of the Shikoku Distict, with the descriptions of three new species. Bulletin of the Biogeographical Society of Japan 22 1-17
1958年に愛媛県松山市東拓川町の井戸から採集されている。体長6.6mmのオスと4.6mmのメスの2匹が、メクラミズムシモドキなどと一緒にいる。
ナガミズムシ属 Phreatoasellus Matsumoto, 1962
体が細長い。腹尾節や脚も長い。
・Phreatoasellus akiyoshiensis (Ueno, 1927)
Matsumoto K. 1960 The subterranean-water isopod of Akiyoshi limestone area. Japanese journal of zoology 12: 603-608
1927年5月に山口県秋芳洞の琴ヶ淵の淡水から採集された。眼がないのに光に敏感と書いてある。北海道から九州の井戸から見つかる。
・アワナガミズムシ Phreatoasellus awaensis Nunomura, 1914
布村昇 2014 四国産等脚目甲殻類-2 高知,徳島,香川県産標本. Bulletin of the Toyama Science Museum 38 55-94
徳島県阿波市市場町上喜来北原の井戸水から見つかる。
・Phreatoasellus higoensis (Matsumoto, 1960)
Matsumoto K. 1960 Subterranean isopods of the Kyushu District, with the descriptions of three new species. Bulletin of the Biogeographical Society of Japan 22: 27-44.
・Phreatoasellus iriei (Matsumoto, 1978)
・Phreatoasellus joianus (Henry & Magniez, 1991)
韓国から見つかる。
・ナガミズムシPhreatoasellus kawamurai (Tattersall, 1921)
Tattersall WM 1921 Mysidacea, Tanaidacea, and Isopoda. Pt. 7. In: Zoological results of a tour in the Far East. Memoires of the Asiatic Society of Bengal. 6: 403-443 (plates 15-17).
日本で最初に見つかった地下水性ミズムシ。細長く、体長は3cmを超える。細長く小さい目がある。滋賀県大津市の井戸水から最初に見つかり、近畿、中国、四国、九州の井戸水や洞窟から見つかる。日本海域研究第49号に写真がある。
・Phreatoasellus minatoi (Matsumoto, 1978)
Matsumoto K. 1978 Three new species of subterranean asellids from southern Kyushu and the Kii Pensinsula, Japan. Journal of the Speleological Society of Japan. 3: 20–34.
下平の坑道から見つかる。
・Phreatoasellus miurai (Chappuis, 1955)
日本
・Phreatoasellus uenoi (Matsumoto, 1978)
熊本県球泉洞から見つかる。
・Phreatoasellus yoshinoensis (Matsumoto, 1960)
徳島県川田町、山川町の井戸水から見つかる。
ミズムシ属 Asellus Geoffroy, 1762
・Asellus amamiensis Matsumoto, 1961
Matsumoto K. 1961 Two subterranean isopods from the Amami group (Ryukyu Islands), with a description of a new species. Annotationes zoologicae Japonenses 34:208-215
Matsumoto K. 1963 Studies on the subterranean Isopoda of Japan, with notes on the well-water fauna of Japan. (Part 1). Studies on the subterranean Isopoda of Japan.(No. 1). Anual Rept. Tokyo-to Lab. Med. Sci. 13 (Suppl.): 1-77
奄美大島名瀬市の井戸から見つかる。
・Asellus ezoensis Matsumoto, 1962
Matsumoto K. 1962 A new subterranean asellid from Hokkaido. Japanese journal of zoology. 13:257-265.
北海道札幌や帯広の井戸から見つかる。
・Asellus hyugaensis Matsumoto, 1960
宮崎県西都市の井戸から見つかる。
・Asellus kumaensis Matsumoto, 1960
熊本県人吉市下青井町の井戸から見つかる。
・メクラミズムシ Asellus musashiensis Matsumoto, 1961
東京都中野区の井戸から見つかる。
・Asellus shikokuensis Matsumoto, 1960
・Asellus tamaensis Matsumoto, 1960
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