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2022年5月

2022年5月31日 (火)

日本のヒメフナムシは何十種もいるみたい

日本のヒメフナムシ属は、大きいヒメフナムシ(第1胸節の後方の剛毛の束がない方)と小さいチビヒメフナムシに分けられる。

超珍しいフナムシ、チビヒメフナムシ: だんだんダンゴムシ

「日本産土壌動物 第二版: 分類のための図解検索」によると、

大きいヒメフナムシは北海道、本州、四国にニホンヒメフナムシがいて、山陰地方と九州にチョウセンヒメフナムシがいて、南西諸島にリュウキュウヒメフナムシがいて、この3種はオスの第2腹肢の形で見分けられるとしている。



しかし、日本のヒメフナムシは何種いるか調べた最近の研究がこれを修正しようとしている。

Harigai W, Saito A, Suzuki H, Yamamoto M. 2020 Genetic Diversity of Ligidium Isopods in Hokkaido and Niigata, Northern Japan, Based on Mitochondrial DNA Analysis, Zoological Science 37(5), 417-428. https://doi.org/10.2108/zs200017

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Yoshino H. Kubota K. 2022 Phylogeographic analysis of Ligidium japonicum (Isopoda: Ligiidae) and its allied species reveals high biodiversity and genetic differentiation in the Kanto region, Japan. Entomological Science, 25: e12501. https://doi.org/10.1111/ens.12501

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何百匹ものヒメフナムシを調べている。


2つをまとめると

・ニホンヒメフナムシの生息域は北海道と新潟(北海道から持ち込まれた国内外来種の可能性あり)で、他の地域では採集できない。

・本州にはニホンヒメフナムシの近縁種が7種いて、形態で見分けにくい?

・他にもニホンヒメフナムシと近縁でない隠蔽種が多数いる。(2つの論文を照らし合わせていないので何種かわからない)

・これらが一地点から何種もとれる。(例:新潟県阿賀町新谷は20匹から5種、千葉県君津市鹿野山は9匹から3種)

・同じ種でも場所ごとに遺伝的に分化していることがある。(これ、もはや別種では?)



見た目が似た別種が想像を絶するほどいるようである。

未調査の場所もあるから、日本だけでヒメフナムシは50種ぐらいいるかも?

数十キロどころか数キロ移動しただけで種が違うのは恐ろしすぎる。

しかも一ヶ所から多数の種がとれる場所が多くて、高い割合でとれる普通種と非常に低い割合でしかとれない珍種が混ざる(しかも形態で区別できない?)という魔界が広がっている。

ヤバいものを見てしまったが、海岸のフナムシの研究を見返したらこっちは闇が深くなかった。



ヨーロッパのオカダンゴムシ、ホソワラジムシ、クマワラジムシなどは遺伝子解析で種を整理する研究が進んでいる。

同じ形態のホソワラジムシの集団が遺伝的に分かれ、互いに交尾もしないという研究もあった↓

Lefebvre F, Marcadé I. 2005 New insights in the Porcellionides pruinosus complex (Isopoda, Oniscidea): biological, behavioural, and morphological approaches. Crustaceana, 465-480.



捕まえたダンゴムシやヒメフナムシを他の地域に放してはいけない、ということがよくわかる。

地域固有の種がいなくなる原因になるかもしれない。





どうでもいい話

オオグソクムシとウミクワガタの研究者の話を読んだ。おもしろかった。

http://hotozero.com/knowledge/animals_001/

http://hotozero.com/knowledge/animals_008/



筆者の職業がフリーライターとあった。

今までの人生で一切かかわった事のない職業すぎて、どういう人なんだろうとか食っていけるのかとか考えてしまう。

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