小笠原のダンゴムシ、ワラジムシ。危機的な固有種
東京都小笠原諸島の森でダンゴムシを探した。
で、全然ダンゴムシがいない。
陸上等脚目相が崩壊しているのは本当らしい。
外来種リクヒモムシの侵入が原因と言われている。
父島で探して、固有種は発見できなかったがコスモポリタン種?と外来種は見つけられた。
コシビロダンゴムシの仲間(Venezillo parvus?)
住宅地から森の中までどこでもいた
これは森の中にいた
小笠原固有のハラダニセヒメワラジムシにみえたが、目があるので違うと思う
モリワラジムシの仲間(Burmoniscus?)
なぜか森ではかなり少なく、海岸林にいる
海浜性ではないはず
森にはおらず、道路沿いや海岸林の乾燥した場所にいた
住宅地や海岸林ならどこでもいるぐらいいた
触角がいい
小笠原諸島の陸上等脚目のうち、固有種は以下
アシナガフナムシ
ナガレフナムシ
オガサワラハヤシワラジムシ
オガサワラフナムシ
オガサワラタマワラジムシ
ハラダニセヒメワラジムシ
下4種は父島や母島の各地の森林土壌で過去に記録がある。
詳しい人から聞いたところ、ヒモムシの広がりとともに状況は毎年厳しくなり、記録がすでに途絶えている種もあるらしい。
どうりで全然見つからないわけだ。
日本の絶滅種の「その他無脊椎動物」に今いるのはトキウモウダニだけ。
ここに加わってほしくないが、
現地での個人的な感触では絶望的である。
http://hahoman.seesaa.net/article/49622238.html
母島でオガサワラフナムシを見つけている2007年のブログがあった。
>その後,広範囲を探したのですが,その分布域は山の上にかなり限定されているようです.
過去の記録では住宅地そばのもあるので、
2007年はリクヒモムシによって生息地が縮小している途中だったのだと思う。
オガサワラフナムシは母島の乳房山の山頂には何年か前までいたが、今はもういないという話を現地で聞いた。
昆虫と自然の2022年4月臨時増刊号には、小笠原のリクヒモムシについて詳しく書いてある。
これによると、小笠原諸島の父島の宮野浜で1981年に陸生ヒモムシが最初に発見、母島は1995年発見で、
小笠原の等脚を食べ尽くしているリクヒモムシは学名も原産地も不明らしい。
海外でもヒモムシが侵略的であるという報告はないし、侵略的外来種に指定されていない。
なぜ小笠原でこんなことに…
リクヒモムシの侵入前の等脚目の記録
青木淳一・原田洋(1978)小笠原の土壌動物相の研究I.土壌節足動物の群集構造.国立科博専報,11: 91- 106
リクヒモムシがいないときの小笠原の貴重な記録をみてみた。
父島と母島で大型土壌動物を採集して、73.9%が等脚だったとある。
信じられないのが等脚の数であり、25cm×25cm枠×5個の合計で、
大半の地点で100個体を超え、1000個体近くなる地点もある。
ムニンヒメツバキ林やテリハボク林を「自然林」とみなしているが、これは2次林のはず。
自然林と言えるのはウドノキ林やシマイスノキ林ぐらいでは。
実際に地点に行ってみたが、ダンゴムシが全く見られない場所もあり、ショックが大きい。
ダンゴムシが残る場所でもこの数字は出せそうにない。
リクヒモムシがいない時代はダンゴムシの天国だったのかもしれない。
リクヒモムシの侵入による等脚の減少の記録
リクヒモムシの侵攻が進む母島南崎で、25cm コドラート×3枠を35ヶ所を設置し、土壌を採集して土壌動物をハンドソーティングしている。
南崎の北部はヒモムシがいて、等脚が140匹/m2、
南崎の南部はヒモムシがいなくて、等脚が1200匹/m2。
ヨコエビも桁が2~3つほど違う。
捕食者も差があり、エサがヒモムシに横取りされたからとしている。
ただし、クモは数が変わらない。種構成が変わりそうだが種まで同定していないようである。
トビムシはヒモムシに食われないとあるが、ネットで検索すると捕食動画が見つかる。
おそらく繁殖力が強くて数が減らないのだと思う。
画像の埋め込み
アジアモリワラジムシやコガタコシビロダンゴムシが食われたという文でこの写真が使われているが、
このワラジムシは本州のオオハヤシワラジムシ属では?
オガサワラハヤシワラジムシでもなさそう。
捕食者1種で、等脚相が不可逆的なレベルにまで破壊されるなんて信じがたいのだが。
脆弱な海洋島の生態系だからなのか。