カテゴリー「海のダンゴムシ:オオグソクムシ、スナホリムシ,ウオノエ」の35件の記事

2020年7月24日 (金)

オオグソクムシとダイオウグソクムシの食べ物

メキシコ湾のダイオウグソクムシ

ダイオウグソクムシとは大西洋、インド洋、南シナ海(台湾沖というのは東沙諸島)などの深海300~2000mで見つかる世界最大のダンゴムシ

Barradas-Ortiz, C., Briones-Fourzán, P., & Lozano-Álvarez, E. (2003). Seasonal reproduction and feeding ecology of giant isopods Bathynomus giganteus from the continental slope of the Yucatan peninsula. Deep Sea Research Part I: Oceanographic Research Papers, 50(4), 495-513.

メキシコ湾からトラップと底引き網で数百匹捕まえている。


オスは210mm以上、メスは180mm以上の体長で成熟する。

300mm以上は全てオス。性比はだいたい1対1。

夏だけappendix masculinaを持つ頻度が下がるので、ダイオウグソクムシのオスのアソコは生えたり消えたりするとしている。



夏も冬も、子どもも大人も、胃の中から出て来るのは半分以上が魚で、残りも甲殻類、頭足類(だいたいイカ)がほとんど。

甲殻類はエビ、ヨコエビ、シャコ、等脚類(スナホリムシ等)など。共食いもあり。

他には有孔虫、海綿、アニサキス、ゴカイ、腹足類、ツノガイ、コケムシ、サンゴ、そしてsoft matterという消化物が見つかる。



wikipediaにはクジラを食べるとあり、youtubeにはワニ肉を食べるとある。



オオグソクムシ

ダイオウグソクムシより小さいが、100mmを超える日本最大のダンゴムシ

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Shih, C. T. (1972). Note on the giant isopod genus Bathynomus Milne Edwards, 1879 with description of a new species.

消化管の内容物は、放散虫、魚、ソコミジンコと書いてある。


水族館のオオグソクムシはサバがエサらしい。


オオグソクムシが繁殖するには体長50mm(♂)88mm(♀)以上になる必要がある。

Soong, K., & Mok, H. K. (1994). Size and maturity stage observations of the deep-sea isopod Bathynomus doederleini Ortmann, 1894 (Flabellifera: Cirolanidae), in eastern Taiwan. Journal of Crustacean Biology, 14(1), 72-79.



ダイオウグソクムシもオオグソクムシも純粋な肉食のようだ。

ウオノエ亜目はだいたい肉食。

深海底に落ちる有機物の由来は、動物かそれ以外、陸か海、どっちが多いの?







ウオノエ亜目の画像を探していたら、ウオノエの炊き込みご飯を食べたという記事を見た。

可愛くて美味しい寄生虫『ウオノエ』 醤油味の炊き込みご飯は絶品?

>加熱により素晴らしい出汁が出て

>メスが抱卵している場合は味がより一層良く

と書いてある。食べてみたい。

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2019年3月 8日 (金)

グソクムシ科Aegiochus属

歌魚風月さまからグソクムシをもらいました。

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腹が膨れている。

おそらく魚の寄生虫。



グソクムシ科、スナホリムシ科、スナホリムシダマシ科、ウオノエ科、ニセウオノエ科: だんだんダンゴムシを参考にすると、グソクムシ科だった。

前3対の胸脚が鎌型、後ろ4対は歩行用で、maxillipedの頂端に棘あり。




グソクムシ科の属への検索表

Bruce, N. L. (2009). The marine fauna of New Zealand: Isopoda, Aegidae (Crustacea) NIWA.

グソクムシ科の検索表があった。

簡単な日本語訳。(訳が怪しい)

1.第7胸節より第1腹節の幅は断絶するように狭い;第5腹節の左右の端はどの節にも完全に接しない;多くは目がない━━━2
1.第7胸節より第1腹節の幅は断絶するように狭いと言えない;第5腹節の左右の端は第4腹節に重なっている;大きな目がある━━3
2.額葉frontal laminaあり、maxilliped palp3節、尾肢のramiが層状━━━━Syscenus
2.額葉なし、maxilliped palp2節、尾肢内肢のramiはstub状、外肢は糸状━━Xenuraega
3.背中が潰された形、額葉は細く、盾型か下膨れ、rostrumの前方が広く円いか切り欠け━━ウオノシラミ属 Rocinela
3.背中がアーチ状、額葉は広い、rostrumは狭く円いか先が尖る━━━━━━━━━━4
4.rostrumの前方が尖る、額葉の背面が平ら、第1触角柄節が平ら━━5
4.額葉は後端がフリーで狭い、触角は平らでない━━━━━━━━6
5.尾肢のramiが同一平面上で腹尾節の先端に届く、尾肢内肢の側面に凹みがない、腹尾節後端が強く突き出ない━━━━グソクムシ属 Aega
5.尾肢外肢に対して内肢は斜めで、腹尾節の先端を越えない、略尾肢内肢の側面に凹みがある、腹尾節後端がグッと突き出る━Aegapheles
6.rostrumは腹側へもしくは腹側と後方へ曲がる、maxilliped palp第5節は幅より長さが長く、第4節とくっつかない━━Aegiochus
6.rostrumは小さく、突き出ず、背中側から見えない、maxilliped palp第5節は小さく、第4節の幅の0.3倍未満━━━━Epulaega




Aegiochus

同定したところ、Aegiochus属の特徴を持っていた。


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長方形な体


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大きい目


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第1触角の節が棒状

目の間の前方の正中線上にある先端部分(rostrum)が下方に折れ曲がり、頭楯の腹面が広く平たくならない。


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maxilliped


次のページ




グソクムシ属 Aega

rostumは際立って鋭く前方に突き出る、第1触角の柄節のうち2節は背腹軸方向に押しつぶされた形になり、そこに前外側にlobeや細い第3節があることがある、尾肢原節に細長い正中するlobeがあり、それは尾肢内肢の長さまで伸びる。

グソクムシ科のグソクムシ属Aegaは、鳥羽水族館のブログに写真があった。

第1触角の節が平たく、頭楯の腹面が平たいので、Aegiochus属ではなくグソクムシ属であるとわかる。

メナガグソクムシはAega属、メダマグソクムシはAegiochus属。




ウオノシラミ属 Rocinela

魚の血を吸う。海底によく潜んでいて、食事のときだけ魚に貼り付く。

体側面の縁は徐々に先細る、顎脚の鬚は2~3節、第1触角柄節は平たくならない、額葉は小さく頭楯は幅広、上唇は小さくフリー、大顎の鬚の第1節は細長い。

BRUSCA, R. C., & FRANCE, S. C. (1992). The genus Rocinela (Crustacea: Isopoda: Aegidae) in the tropical eastern Pacific. Zoological journal of the Linnean Society, 106(3), 231-275.


サーモンのお寿司に似るウオノシラミ属が有名。

オオグソクムシに次ぐアイドル候補!?未知の深海生物登場

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ニホンスナホリムシモドキ?モクズスナホリムシ?

歌魚風月様よりスナホリムシをいただいた。

もらったのは2017年で忘れていました。すみません。

沈木に棲む生物


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5mmぐらいのスナホリムシ



スナホリムシ科で間違いない。

スナホリムシ科は62属あり、以下の7属が日本から見つかっている。

スナホリムシ科
┣スナホリムシ属 Cirolana
┣モモブトスナホリムシ属 Natatolana
┣ナガスナホリムシ属 Dolicholana
┣ヒメスナホリムシ属 Excirolana
┣ナギサスナホリムシ属 Eurydice
┣オオグソクムシ属 Bathynomus
┣スナホリムシモドキ属 Metacirolana





ニホンスナホリムシモドキ Metacirolana japonica

サイカイナギサスナホリムシ Eurydice saikaiensis

サドスナホリムシ Cirolana sadoensis ?

モクズスナホリムシ Cirolana liginicola ?



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1cm以下で、スナホリムシでは小さい方。


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第2触角が離れ、第1触角がくっつき気味。

頭楯が前に出っ張る。

額片が膨らむ。


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頭楯が前に出っ張る。


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第4腹節が第5腹節の側面を覆う。

腹尾節の後端が長方形だが、中心が浅くくぼむ。




情報がなくてニホンスナホリムシモドキについてよくわからない。

サイカイナギサスナホリムシにも見えるが違う。

サドスナホリムシとモクズスナホリムシに似るが、複眼が大きいので違うかもしれない。

モクズスナホリムシは木材から採集されているので、これかもしれない。

学術用語が難しすぎて決められない。

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2018年12月25日 (火)

ソコウオノエ

前のページの続き
Imgp2244

このウオノエがシマアジノエではないかとのことで検討した。



シマアジノエ Ceratothoa trigonocephala

Hadfield, K. A., Bruce, N. L., & Smit, N. J. (2014). Review of the fish parasitic genus Ceratothoa Dana, 1852 (Crustacea, Isopoda, Cymothoidae) from South Africa, including the description of two new species. ZooKeys, (400), 1.

頭部が三角形、第1-4胸節はほぼ同じ長さ、第1胸節の中心背面に隆起、第1胸節の前方外側は短くはっきりと円い、尾肢が腹尾節後端を通り越していない。

ことで同定できると書いてある。

合っているような気もするが違うような。



歌魚風月
様はソコウオノエの可能性にも触れていたので、こちらも確認した。



ソコウオノエ Ceratothoa oxyrrhynchaena

Martin, M. B., Bruce, N. L., & Nowak, B. F. (2013). Redescription of Ceratothoa carinata (Bianconi, 1869) and Ceratothoa oxyrrhynchaena Koelbel, 1878 (Crustacea: Isopoda: Cymothoidae), buccal-attaching fish parasites new to Australia. Zootaxa, 3683(4), 395-410.

オーストラリア産のキダイ属の一種 Dentex spariformis の口内から捕れたソコウオノエが載っている。

節や脚の形を見たら、だいたい同じ。


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第7胸脚



これはシマアジノエではなく、ソコウオノエの可能性が高い。

頂いた4匹全てソコウオノエのようです。

しかし、これで終わりではなかった。



Martin et al. (2013)はYamauchi (2009)に触れていた。

Yamauchi (2009)は日本産のアカムツから捕ったソコウオノエが載っている。



2つの論文で書いていることが違っていた。

第2触角が、7節(Yamauchi)、9節(Martin)

尾肢内肢と外肢が、違う長さ(Yamauchi)、同じ長さ(Martin)

第1腹肢内肢は、外肢と同じ長さ(Yamauchi)、外肢より小さい(Martin)

maxillipedの棘が、9本(Yamauchi)、5本(Martin)



稀によくある。

この違いの原因は、個体差、成長、地域差、可塑性、実は別種、のどれだ。



とりあえず、Martin et al. (2013)と全ての項目で合致した。

なので、頂いたウオノエの名前は、「Martinらによって2013年に発表された論文に基づくソコウオノエ」Ceratothoa oxyrhynchaena sensu Martin et al., (2013)とすべきなのかもしれない。



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頂いたウオノエのメス2匹のうち1匹は、第1腹肢内肢が外肢より小さい。

ただし、もう1匹は内肢と外肢のサイズが同じだった。

思ったより闇が深い。





それにしても、ウオノエは種類が多い。

なぜ魚によって違うウオノエが寄生しているんだろう?

魚の血液は種によって違う毒があって、ウオノエは種ごとに違う毒に適応している?

魚に色んな毒を注射したら、ウオノエが寄生しない魚になるのかな?

 

 

 

 

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ウオノエ科ヒゲブトウオノエ属

歌魚風月様からウオノエを雌雄2匹ずついただきました。
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メス


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オス


胸脚が全て湾曲してるのでウオノエ科。
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メスの裏側



シマアジノエ Ceratothoa trigonocephala ではないかとのことでした。

まずシマアジノエの属するヒゲブトウオノエ属か確認した。



ヒゲブトウオノエ属 Ceratothoa

ヒゲブトウオノエ属の形は、

・頭部が三角形、触角の基部が隣接する、第1腹節が最も狭い、長さは幅の2.1-2.9倍、尾肢はほぼ同じで腹尾節の後端まで伸びる、第1胸節の前方外側がlobっている。

・触角の基部が隣接する、第1胸脚が最も長い、第4-5胸節が最も幅広、尾肢の内肢と外肢の長さがほぼ同じで、同じ長さか腹尾節の後端まで伸びる、第1胸節の前方外側がlobっている。

で同定できると次のページで挙げた論文に書いてある。



触角の基部が太くて接するのが特徴で「ヒゲブト」のようだ。

ウオノエ属 Cymothoa やエラヌシ属 Mothocya は第1触角の基部が著しく幅広にならないので、第1と第2触角どうしが離れている。


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これはヒゲブトウオノエ属でしょう。



次のページへ。





ウオノエ科の一部の属への検索表

Martin, M. B., Bruce, N. L., & Nowak, B. F. (2016). Review of the fish-parasitic genus Cymothoa Fabricius, 1793 (Crustacea: Isopoda: Cymothoidae) from Australia. Zootaxa, 4119(1), 1-72.

触角の基部が太くて接する特徴は他の属にもあるみたい。



Cancer 25号に日本のウオノエ科の一覧がある。

日本では、ウオノギンカ属Anilocra、ウオノコバン属Nerocila、ウオノドウカ属Renocila、カイテイギンカ属Preopodias、ヒゲブトウオノエ属Ceratothoa、エビスエラヌシ属Cterissa、ウオノエ属Cymothoa、エルウオノエ属Elthusa、カタウオノエ属Glossobius、エラヌシ属Mothocya、マンマルウオノエ属Ryukyuaがいる。

ウオノギンカ属、ウオノコバン属、ヒゲブトウオノエ属、ウオノエ属、エルウオノエ属がメジャーな属。

Smit, N. J., Bruce, N. L., & Hadfield, K. A. (2014). Global diversity of fish parasitic isopod crustaceans of the family Cymothoidae. International Journal for Parasitology: Parasites and Wildlife, 3(2), 188-197.


ウオノエ属の特徴

Hadfield, K. A., Bruce, N. L., & Smit, N. J. (2013). Review of the fish-parasitic genus Cymothoa Fabricius, 1793 (Isopoda, Cymothoidae, Crustacea) from the southwestern Indian Ocean, including a new species from South Africa. Zootaxa, 3640(2), 152-176.


エラヌシ属の特徴

Hadfield, K. A., Sikkel, P. C., & Smit, N. J. (2014). New records of fish parasitic isopods of the gill-attaching genus Mothocya Costa, in Hope, 1851 from the Virgin Islands, Caribbean, with description of a new species. ZooKeys, (439), 109.


ウオノハラモグリ属の特徴

Martin, M. B., Bruce, N. L., & Nowak, B. F. (2014). Redescription of Ichthyoxenus puhi (Bowman, 1962)(Isopoda, Cymothoidae), parasite of the moray eel Gymnothorax griseus (Lacépède, 1803) from Mauritius. Crustaceana, 87(6), 654-665.

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グソクムシ科、スナホリムシ科、スナホリムシダマシ科、ウオノエ科、ニセウオノエ科

海にいるダンゴムシ型のワラジムシ目のうち、

腹尾節に鰓室があるのは、コツブムシ亜目。

なくて板状なのはウオノエ亜目。

鰓室の写真はワラジムシ目の亜目の特徴: だんだんダンゴムシ



ウオノエ亜目の分類

ウオノエ亜目は4つの上科に分けられる。

ウオノエ亜目
┣ウミナナフシ上科 Anthuroidea
┣エビヤドリムシ上科 Bopyroidea
┣ウオノエ上科 Cymothooidea
┗カクレヤドリムシ上科 Cryptoniscoidea


ウミナナフシは昆虫のナナフシのように体が細長い。(オニナナフシはヘラムシ亜目)

エビヤドリムシとカクレヤドリムシは甲殻類に寄生し、体の構造は退化している。

カクレヤドリムシは胸脚もほとんどないことが多い。


エビヤドリムシ上科スナモグリヤドリムシ
Imgp5109


カクレヤドリムシ上科ウミホタルガクレ
Imgp1443



ウオノエ上科の分類

ウオノエ上科は形がダンゴムシに近い、ずんぐりむっくり。

肉食や屍肉食もいるが、魚類やエビ類に寄生する種が多い。

魚の死体を食べる種が寄生性に進化したらしい。

寄生性になると体がツルツルになり、脚が鋭く、口器にかぎ爪のような棘ができる。



ウオノエ上科には9つの科によって構成される。

ウオノエ上科
┣Aegidae グソクムシ科
┣Anuropidae オナシグソクムシ科
┣Barybrotidae
┣Cirolanidae スナホリムシ科
┣Corallanidae ニセウオノエ科
┣Cymothoidae ウオノエ科
┣Gnathiidae ウミクワガタ科
┣Protognathiidae
┗Tridentellidae スナホリムシダマシ科


BarybrotidaeとProtognathiidaeは日本で見つかっておらず、種数も少ない。

ウミクワガタ科だけは第1胸節は頭部と融合し第7胸脚がないので、胸脚が5対に見える。



オナシグソクムシ科 Anuropidae

千葉県立中央博物館で見た。
Imgp98612
”浮力を得るため、ワックスを蓄積している。””外骨格はやわらかい。”

オナシグソクムシはダイオウグソクムシに次ぐ大きさ。

深海を漂っている。

尾肢が腹肢のようになる点で同定できる。尾肢も呼吸器官に進化しているとされる。

クラゲの中に寄生する?ので、酸欠にならないようにしているのかも。



そういえば、コシビロダンゴムシ科では逆に腹肢が退化している属がある。

Buddelundiinae亜科のBuddelundia属とBarrowdillo属は、偽気管は第1から第4腹肢にあるが第5腹肢にはない。

第4腹肢が大きく第5腹肢が内側に完全に隠れる。

Taiti, S. (2014). New subterranean Armadillidae (Crustacea, Isopoda, Oniscidea) from Western Australia. Tropical Zoology, 27(4), 153-165.

呼吸に使っていないのかもしれない。



グソクムシ科、スナホリムシ科、ニセウオノエ科、ウオノエ科、スナホリムシダマシ科の見分け方

グソクムシ科、スナホリムシ科、ニセウオノエ科、ウオノエ科、スナホリムシダマシ科は似ている。

違いがわかりにくく、専門家でも同定を間違えることが多い。

Nob!!の勝手に甲殻類のウオノエ類の顎脚(リンク切れ。こっちに移動)に顎脚が違うと書いてある。

新しい論文が出ているので、下に書いた内容が古い気がする。



Bruce, N. L. (1985). Calyptolana hancocki, a new genus and species of marine isopod (Cirolanidae) from Aruba, Netherlands Antilles, with a synopsis of Cirolanidae known from the Caribbean and Gulf of Mexico. Journal of crustacean biology, 5(4), 707-716.

ここの検索表。(日本語訳が怪しい)

1.全ての胸脚が太く湾曲したフック状━━ウオノエ科
1.少なくとも第4-7胸脚は歩行用━━━━2
2.maxillipedの頂端に棘あり━━グソクムシ科
2.maxillipedの頂端に棘なし━━3
3.mandibleのincisorは広く、3歯。maxilluleの内肢は太い棘が3つ━━スナホリムシ科
3.mandibleのincisorは狭い。maxilluleの内肢は痕跡的 or 欠損━━━━4
4.maxilluleが先端が徐々に尖り、棘がある。maxillipedは薄いenditeがある。━━スナホリムシダマシ科
4.maxilluleがはっきりと三日月型。maxillipedにenditeがない━━━━━━━━━ニセウオノエ科



ウオノエ科は全ての脚がフックになっている。

まさにウオノエであり、魚に寄生するとき確実にしがみつける。

歌魚風月様から頂いたウオノエ科ウオノコバン
Imgp1132



スナホリムシ科は全ての脚が歩行用や遊泳用になっている。

スナホリムシ科オオグソクムシ
2
和名がややこしく、オオグソクムシとダイオウグソクムシはスナホリムシ科であり、グソクムシ科ではない。



グソクムシ科、スナホリムシダマシ科、ニセウオノエ科は前方3対がフックで、後方4対がフックでない。

グソクムシ科の一種
Imgp2314



グソクムシ科 Aegidae

mandibleは可動葉片や臼歯状突起がなく、鋭利な刃物状になっている。maxilluleは先端に太く湾曲した棘がある。maxillipedが頑丈なフック状。

第1-3胸脚が著しく太くフック状。第4-7胸脚は湾曲せず歩行用で細い。

ほとんどの種は目が非常に大きい。

日本のグソクムシ科はNob!!の勝手に甲殻類さんに一覧があり、

グソクムシ属Aega、トガリグソクムシ属Aegapheles、Aegiochus、ウオノシラミ属Rocinela、オニグソクムシ属Syscenusの5属がいるらしい。

属の検索表はグソクムシ科Aegiochus属: だんだんダンゴムシ



スナホリムシ科 Cirolanidae

Bruce, N. L. (1986). Cirolanidae (Crustacea: Isopoda) of Australia. Australia: Australian Museum.

眼は小さい。頭楯あり。mandible は3歯、可動葉片、bladeのような臼歯状突起、鬚がある。maxillule は11-14の棘が外肢にあり、3-4の毛が内肢にある。maxillaは鬚と外肢があり、長い毛がある。maxilliped palpは5節、基節内葉あり。

第1-3胸脚は歩行用、突き出た硬い爪がある。第4-7胸脚は歩行用か遊泳用。

腹肢は面的。

オオグソクムシBathynomus doederleini やヒメスナホリムシ Excirolana chiltoni などがいる。



ニセウオノエ科 Corallanidae

強く曲がったフック状のmaxilluleを持つ。maxillaはあるが、痕跡的なことが多い。maxillipedの基節内葉は欠ける。胸節、腹節、腹尾節は毛深い。目がスナホリムシ科より大きい。

エビノコバン Tachaea chinensis などがいる。

属への検索表はエビに寄生するエビノコバン: だんだんダンゴムシ



ウオノエ科 Cymothoidae

Brusca, R. C. (1981). A monograph on the Isopoda Cymothoidae (Crustacea) of the eastern Pacific. Zoological Journal of the Linnean Society, 73(2), 117-199.

眼は幼生時に大きく、成熟すると小さくなる。腹節は5節(例外あり)。maxillipedは2-3節。maxilliped、maxillule、maxillaの先端には太くて湾曲した棘がある。mandibleは可動葉片、毛、臼歯状突起がなく、鋭利なカッターのようになる。

第1-7胸脚が著しく太く湾曲し、フック状。

腹肢原節が発達し1肢3枚に見えることがあり、内肢はひだがあることがある。

属は40もあり、分類は難しい。

Cancer 25号に日本のウオノエ科の一覧がある。

一部の属はヒゲブトウオノエ属: だんだんダンゴムシに書いた。



スナホリムシダマシ科 Tridentellidae

Delaney, P. M., & Brusca, R. C. (1985). Two new species of Tridentella Richardson, 1905 (Isopoda: Flabellifera: Tridentellidae) from California, with a rediagnosis and comments on the family, and a key to the genera of Tridentellidae and Corallanidae. Journal of Crustacean Biology, 5(4), 728-742.

maxillipedに長い底節があり、鬚の第3節を超え、enditeがある。maxilluleは先端が徐々に尖り、先端に3~5本のフック状の棘があり、それより小さい棘が傍にある。maxillaは毛と棘が多いが、湾曲した棘やフック状の毛はない。

第1-3胸脚は太く湾曲してフック状。第4-7胸脚は歩行用。

腹肢は薄い。

スナホリムシダマシ属のみがある。





分け方は人によって違うかもしれない。

分類の変更がよくあるので、書いてあることは古いかもしれない。

形態用語の説明は以下。

オオグソクムシの付属肢(前編): だんだんダンゴムシ

オオグソクムシの付属肢(後編): だんだんダンゴムシ

「海洋と生物」186号の日本産等脚目甲殻類の分類 (1)にも詳しく書いてある。

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2018年10月12日 (金)

「オオグソクムシの本」

オオグソクムシの本(森山徹 著)

オオグソクムシの体の構造(節や内臓など)や生活について詳しく解説している。
Imgp2050_2165ページの一部


体の構造については、ダンゴムシもほぼ同じなので、ダンゴムシ好きも読む価値がある。

交尾のときに起きる脱皮は、「産卵脱皮」というようです。

訳語がわからず、今まで生殖脱皮と書いていた…

いい加減なこと書いているブログだ…

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2017年11月27日 (月)

ウミホタルに寄生するワラジムシ目:ウミホタルガクレ

歌魚風月さんからウミホタルをいただきました。

ウミホタル Vargula hilgendorfii とは、肉食の貝虫亜綱の甲殻類。
Imgp1436
左は甲羅を開けたところ。



このページの最後にウミホタルガクレがいるのでは?とあり、その通りでした。

ウミホタルガクレとは、寄生性のワラジムシ目(等脚類)です。




ウミホタルガクレ

ウミホタルガクレは、大きさは1~2mm程度で、ウオノエ亜目に属する。

水産無脊椎動物研究所のウミホタルガクレの性転換というサイトに詳しい生態が書いてある。

2匹で寄生すると雄性先熟型の性転換をする、ウミホタルの卵を食べてメスは卵をつくる、などなど。



甲羅の中に1匹いた。
Imgp14372
黒線

Imgp1439



Imgp1443
拡大すると確かに等脚類な雰囲気。

眼がない。


Imgp1442
顔がダーウィンが来た!のヒゲじいに見えた。




ヒゲ(まつ毛?)のように見えるものは、第1触角の第1節である。

節が後ろへ広がってフォーク状に分岐し、独特な形をしている。

1
なぜこんな形を?

論文には書いていなかった。



Imgp1446
第1胸脚の前節の形が種によって微妙に違う。

この種は Onisocryptus ovalis だと思う。



他に、Onisocryptus kurilensisOnisocryptus sagittus がいる。

どの種もウミホタルを宿主とする。



Imgp1447
うまく映ってないが、腹尾節がギザギザ。



だいぶ前にもらったが、載せるまで時間がかかってしまった。

知らない種は調べるのが大変で………と言い訳

得意分野以外は厳しい。

しかもやるべきことをほったらかしでこれを観察。今後が大変である。










関係ない話さそうである話

日本甲殻類学会は、英文と和文の学術雑誌を毎年出している。

一部の巻は無料で読める。

英文誌 Crustacean Research

和文誌 CANCER





日本土壌動物学会の出す学術誌 Edaphologia も最近のものは無料で読める。

どちらもダンゴムシやワラジムシなどの研究が時々載るので読んでいる。

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2017年8月24日 (木)

ニセスナホリムシが人の体を食べた事例

前のページに、海に足を入れたらヨコエビ?に食われて重傷を負ったというニュースについて書いた。

BBCのニュース(画像に注意)ではニセスナホリムシの可能性も挙げている。


ニセスナホリムシは海に住む肉食のダンゴムシ。

スナホリムシ科には肉食の種類が多い。

死んだ魚を食べるが、人の死体を貪食することがある。



ニセスナホリムシによる土左衛門の蚕食例

平沢、喜田、柳瀬 1999. ニセスナホリムシの蚕食によって24時間で白骨化した一例(A Case Report of Encroached Corpse Skeletonized within 24 hours by the Ravage of Cirolana harfordi japonica) 法医学の実際と研究 42巻 221-223ページ

柏木、杉村、原 2010. 特異な蚕食を認めた水中死体の1剖検例:ニセスナホリムシによる死後損壊(A Forensic Autopsy Case of Drowning with Peculiar Encroaching Ravage: Postmortem Injuries by Cirolana harfordi japonica) 法医学の実際と研究 53巻 17-20ページ


どちらも白骨化した死体の写真が掲載されているので注意。

法医学はこういう分野だったのを思い出した。

人の死後何日で何の種類のウジやカビが出現するか、という研究を聞いたことがある。



1999年の三重県の事件

志摩半島沖で転覆した漁船に乗っていた漁師が、翌日、顔面が白骨化した死体で海底から見つかった、という三重県警の捜査一課による報告。

以下引用。

…「頭皮を残し…顔面、前頭部は軟部組織はなく白骨化し、」…

…「食道等は全てなく、…気管は一部蚕食され遊離し、頸椎前面を露出し、多数の小動物が這い出してきた。前胸部は蒼白で多数の小動物が蠢くが、皮膚表面に損傷はない。」…

…「胸腹部の諸臓器は概ね小動物によって蚕食されていた。」…


蠢く小動物は、ニセスナホリムシだと同定された。

眼や鼻、口、傷口から侵入し、内部を食べたと推測している。健康な皮膚からは侵入しにくいようだ。

24時間でこうなるようだ。



2010年の事件

入水したおばあさんの死体が、38~42時間後に海面を浮遊しているのが見つかった、という報告。

これも顔が集中して食われている。

…「ニセスナホリムシは粘膜や軟化した皮膚においては、小孔をあけて粘膜下ないし皮下に侵入することもあるが、未だ軟化していない皮膚においては、表皮をかじる程度」…



これらの事例から推測するに、健康な皮膚であればスナホリムシが問題になることはないと思われる。

スナホリムシは表皮に留まりたがらないようなので、じっとせず振り払えば問題ないようだ。

とりあえず安心して海水浴ができる。



海を漂う人の体を食べるのは、エビやカニ、ウミホタルのような甲殻類が多い。

サメのような魚も食べる。



Yahoo知恵袋にタコも死体を食べると書いてあるけれど、これは本当なの?

「法医学の実際と研究」には書いていなかった。

まーyahoo知恵袋だから信憑性がない



今まで書いてきた中で、一番きつい内容であった。

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2017年4月26日 (水)

飼育しているオオグソクムシがまた脱皮した

昔、ペットのオオグソクムシの脱皮がうまく行かなかったと書いた

オオグソクムシの脱皮失敗?: だんだんダンゴムシ

結局、ちゃんと外れたようだ。



またペットのオオグソクムシが脱皮した。そして、また失敗した。

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今度も、頭と第1胸節の殻が脱げていない。

2匹いるので、前と同じ子かどうかわからない。



こういう生き物?ストレス?

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