カテゴリー「海のダンゴムシ:ヘラムシ」の13件の記事

2019年1月 7日 (月)

エサによって消化酵素を調節するヘラムシ

ヘラムシは海にいるワラジムシ目。

海藻を食べる種類と動物を食べる種類がある。


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海草にいたオホーツクヘラムシ?



海藻を食べるバルチックヘラムシ Idotea balthica

大西洋には、バルチックヘラムシという海藻を食べるヘラムシがいる。

このヘラムシの消化管の酵素をトランスクリプトーム解析した研究があった。

De Wit, P., Yamada, K., Panova, M., André, C., & Johannesson, K. (2018). Diet-dependent gene expression highlights the importance of Cytochrome P450 in detoxification of algal secondary metabolites in a marine isopod. Scientific Reports, 8(1), 16824.



褐藻にはフロロタンニン、アオサにはジメチルスルホニオプロピオナートやアクリン酸などの毒がある。

解毒酵素として知られるチトクロームP450ファミリー2の配列と量を見て、違いがあるかを見ている。

ヒバマタよりアオサを食べさせたときで、分泌するチトクロームP450の量が多かったらしい。



木材を食べるキクイムシが持つリグノセルロース分解酵素は全く検出されなかったと書いてある。



陸上のダンゴムシも解毒酵素を持っているのかな?

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2018年7月23日 (月)

最終氷期の後、海のワラジムシ目の数が急増している

日本の海岸にいる等脚類の遺伝子を調べている研究でヘラムシとキクイムシを調査して、

個体数の変動で似たような結果を出していた。



北海道のヘラムシ

Hiruta, S. F., Ikoma, M., Katoh, T., Kajihara, H., & Dick, M. H. (2017). A matter of persistence: differential Late Pleistocene survival of two rocky-shore idoteid isopod species in northern Japan. Hydrobiologia, 799(1), 151-179.

オホーツクヘラムシ Idotea ochotensis と、イソヘラムシ Cleantiella isopus

北海道と東北の岩場の磯でそれぞれ200匹ぐらい採集している。


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海草に擬態するオホーツクヘラムシ?


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イソヘラムシ?


北海道では、オホーツクヘラムシは13万年ぐらい前から増えていて、イソヘラムシは最終氷期(約2万年)後に数が増えていると推測している。

オホーツクヘラムシは寒い所が好きで、氷河期を乗り越えて増え続け、

イソヘラムシは寒い所が苦手なので、氷河期が終わってから数が増えた、

ということらしい。



太平洋のキクイムシ

Yoshino, H., Yamaji, F., & Ohsawa, T. A. (2018). Genetic structure and dispersal patterns in Limnoria nagatai (Limnoriidae, Isopoda) dwelling in non-buoyant kelps, Eisenia bicyclis and E. arborea, in Japan. PloS one, 13(6), e0198451.

太平洋と日本海のナガタキクイムシ Limnoria nagatai について調べている。

ナガタキクイムシは海藻のアラメにいて100匹ぐらい集めている。


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キクイムシ

こちらも、最終氷期の後、太平洋のナガタキクイムシは数が増えていると推測している。




太平洋のイワホリコツブムシ

イワホリコツブムシも、調べていないが似たような結果のようだ。

Kitaura, J., Yoshida, R., & Nunomura, N. (2018). Genetic population structure of Sphaeroma wadai Nunomura, 1994 (Isopoda: Sphaeromatidae) along the Japanese coast. Crustacean Research, 47, 111-123.



浅い海にいると亜目が違っても似た結果になるのはおもしろい。

陸にいる昆虫とかも氷河期が終わってから増えた例はあるらしい。

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2017年7月24日 (月)

ヘラムシの亜鋏状の脚

陸のダンゴムシの話が続いたけれど、今回は海の話。
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ヘラムシ?



ヘラムシ亜目の種を決めるとき、胸脚が亜鋏状かどうかが重要になるらしい。

ウミナナフシの分類でも使う。



subchelate

「亜鋏状」は英語で、subchelate という。

分類で見るよく分からない単語は、Crustacea Glossaryを見るとわかることがある。



Kensley, B., & Schotte, M. (1989). Guide to the marine isopod crustaceans of the Caribbean.

の中には、

SUBCHELATE. Having a subchela, forming a pincerlike structure, especially by the dactylus folding back on the propodus.

ペンチのような構造、指節によって前節の上が折り畳み式になっている。(?。うまい日本語訳がわからない。)

指節と前節の間の関節が動いて、指節が折りたたまれることで、前節を土台にして、物が挟める構造になっていることを指すようだ。



chelate

鋏状 chelate の脚は、同様に、発達した前節と可動性の指節で、折り畳める構造になっている。



subchelate と chelate の違い

鋏状とは、
the propodus and dactylus forming a pincerlike structure wherein the latter articulates submedially on the former to produce a "moveable and fixed finger" arrangement. …[Wetzer et al. 1997]
と書いてある。

指節は、前節の内側の関節によってくっつき、”可動指と固定指”の構造をつくる。

カニのはさみのことらしい。



亜鋏状は、
Unlike the case in a true chela, a fixed finger is not developed and the dactylus bites either against an enlarged edge of the propodus or against projecting spines … [Warner, 1977]
と書いてある。

fixed fingerがなく、指節は前節の縁と噛み合う。

カマキリの鎌のこと。

Wikipediaのはさみ(動物)に図が載ってた。



ワラジムシ目では、ほとんどが亜鋏状の胸脚であり、鋏状のものはほとんどないそうです。




ヘラムシ亜目の科ごとの胸脚

ヘラムシ科 Idoteidae、ホソヘラムシ科 Holognathidae :第1胸脚のみ亜鋏状

トガリヘラムシ科 Chaetiliidae :第1胸脚または、第1~3、第1~5、第1~6胸脚が亜鋏状

オニナナフシ科 Arcturidae :第1胸脚 gnathopod、第2-4胸脚 elongated、第5-7胸脚 歩行用 (第2-4胸脚は稀にないことがある)

アフリカヘラムシ科 Holidoteidae、カンカイオニナナフシ科 Antarcturidae、ゴウシュウオニナナフシ科 Austrarcturellidae、ツマリオニナナフシ科 Rectarcturidae  :第1胸脚 gnathopod、第2-4胸脚 elongated、第5-7胸脚 歩行用

カワリオニナナフシ科 Xenarcturidae :第1胸脚 gnathopod、第2, 3胸脚 elongated、第4-7胸脚 歩行用

オニナナフシモドキ科 Arcturididae第1胸脚 gnathopod、第2-7胸脚 歩行用

ニセヘラムシ科 Pseudidotheidae :第1胸脚 gnathopod、第4-7胸脚 歩行用



gnathopodの意味がわからない…



他にヘラムシの科レベルの分類で重要なのは、頭部と第1胸節が融合しているかどうかと、第1腹肢の形態の2つらしいです。

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2016年5月 8日 (日)

大分県国東半島のワラジムシ

大分県の国東に行ってきた。


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名前のわからないヘラムシ

海藻についていた。頭が赤い。大きい。



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自然が残る海岸林によくいる小型で少し紅が差すワラジムシ

ヒイロワラジムシ(Littorophiloscia nipponensis)だと思う。

千葉県や日本海側にもいる。

調べたら、土壌動物図鑑には茨城県から熊本県までいると書いてあった。






居酒屋「米とサーカス」でオオグソクムシが食べられる

高田馬場の居酒屋「米とサーカス」で、オオグソクムシを食べられるイベントを、5月15日までやっている。

http://news.mynavi.jp/articles/2016/04/21/oogusokumushi/

オオグソクムシの和風チリソースが2000円である。

杞憂だろうけど、こんなに捕って数が減ったりしないかと心配になる。

どのくらいの数がいるのか?など、生活史の調査をしてみたい。



しかも、「駿河湾で捕獲できるオオグソクムシは、主にサクラエビという小型のエビを食している」と書いてある。

これも調べてみたい。

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2016年2月13日 (土)

肉食者のエサ取り

川崎ピースケ氏から、ワラジヘラムシ属 Synidotea は肉食で、ヨコエビなどを食べると聞いた。


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ワラジヘラムシの標本


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海藻によくくっついている。

この種は肉食だったのか。



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スナホリムシの一種。ニセスナホリムシだと思ったけど違うような気もする。(やっぱり違うみたいです。)

肉食。

よく泳ぎ回る。

2匹いれたら、共食いして、1匹に。

エサを食べるときの反応がかわいいと、みんな(2人。私を含む。)が絶賛している。

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2015年9月25日 (金)

福岡のヘラムシ

福岡県に行ってきた。

宗像市に行って、オカダンゴムシ、フナムシ、ホソワラジムシ、タマワラジムシを見た。



打ちあがった海藻を拾ってヘラムシを採集した。
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ワラジヘラムシ?

ホンダワラについていた。打ちあがったときに逃げ遅れたと思われる。



紅藻と一緒に小さい容器に入れて、飼育中。

ヘラムシはエアー入れなくても、30mLの海水でも、数日経ったが生きている。

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2015年7月 5日 (日)

八景島シーパラダイスのミクロモンスター展

神奈川県の八景島シーパラダイスで7月12日までミクロモンスター展をやっている。

ウミクワガタ、ヘラムシなどのワラジムシ目(等脚類、Isopoda)とクーマ目(Cumacea)、ヨコエビ目(Amphipoda)が展示されている。

マニアックすぎる。ダンゴムシ好きとしては行くしかない。




オオグソクムシ(Bathynomus doederleini

コーナーの目立つところにいたのは、オオグソクムシ。全然ミクロじゃない…

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周りにいた人たちの感想

「キモッ」

「あれだろ?でっかいフナムシ」(←違います)

「ダイオウグソクムシだ!」(←違います)



オオグソクムシの学名は
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(誤)Batynomus doederleini

(正)Bathynomus doederleini



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別の場所で赤ちゃんも展示中




ヒラタヤリボヘラムシ
 Symmius planus
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実は見たことなかった。初めて見た。

ヤリボヘラムシはトガリヘラムシ科(Chaetiliidae)に属する。

脚は第1胸脚から、場合によっては第6胸脚まで亜鎌状である。



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周りにいた人たちの感想

子ども「ポケモンかっ」




ウミクワガタ
(Gnatiidae科)
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ウミクワガタ

これも初めて見た。

この仲間は、胸脚が5対である。(ほとんどのダンゴムシの仲間は7対)



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「うわっ、魚に寄生して血を吸うだって。」




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小さい甲殻類のパネルがいっぱい壁に貼ってあった。

…(シーン)

誰も見てない。スナホリムシモドキかわいいのに。





この展示を見て、とても興奮した。大満足。

でもこの展示は一般受けしないと思う。



とりあえず、学芸員が必死になって一般向けな展示にしようとしているのがわかった。

この手のマイナーな生き物は展示が難しいとはいえ(実際おもしろくないが)、やはり広く知ってもらわないといけない。

そうしないと、文学部の二の舞か、「2位じゃダメなんですか?」と言われ、研究が進まなくなるかもしれない。



この論文を思い出した。

Small, E. (2011). The new Noah's Ark: beautiful and useful species only. Part 1. Biodiversity conservation issues and priorities. Biodiversity, 12(4), 232-247.

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2015年4月18日 (土)

銚子の海のダンゴムシ

スナメリを見つけた日に海藻も集めた。

ワカメ、紅藻、海草がいっぱい生えていて、等脚類がくっついていた。


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茶色のヘラムシ


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スナホリムシ

海草の根っこにくっついていた。

砂浜で見られるヒメスナホリムシではないようだ。


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オホーツクヘラムシ

色が緑色で、完全に葉っぱに擬態していた。


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ピンクのコツブムシ

目立つ色で、薄い個体から濃い個体まで多種多彩。

ピンクで、女性ウケとか狙ってるのかな?意味ないぞ( ̄▽ ̄)

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2014年6月 6日 (金)

ヘラムシ、コツブムシ

千葉県の勝浦で海藻の葉をとり、海水を入れたバケツに突っこんで、洗った。


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ホソヘラムシ。細長い。

いっぱいとれる。



オヒキヘラムシ?
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でかい。


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白いコツブムシ
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2014年5月14日 (水)

ダンゴムシの仲間は2回に分けて脱皮する。

ダンゴムシの仲間(ワラジムシ目、等脚類)は脱皮動物である。

脱皮する時、後ろ半分、前半分、と2回に分けて脱皮する。

英語では「biphasic molting」という。「posterior →anterior」で二相性。



この二相性脱皮は、ダンゴムシの仲間だけで見られる、特徴的な行動である。

(下の方で書いたように一部のワラジムシ目は単相性脱皮である。)



ダンゴムシが脱皮をする理由は、「成長のため」と「繁殖のため」の2つがある。

詳しくはダンゴムシの生殖脱皮、生理周期、求愛: だんだんダンゴムシで。




脱皮の時系列

1.最初に、表面がうっすら浮き上がる。全体的に白っぽくなることがある。

触ると少し柔らかく感じる。

古い甲羅の再吸収が起きる。



2.後ろ半分を脱ぐ。

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コシビロダンゴムシの後ろ脱皮直前


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コシビロダンゴムシの後ろの脱皮殻



3.数日かけて、後ろ半分がかたくなる。

成長したせいか、若干、後ろ側が太くなったように見える。



4.前半分が白くなり、脱皮をする。

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コシビロダンゴムシの前半分の脱皮直前


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オカダンゴムシの前半分の脱皮殻




脱皮直前に柔らかくなるのは、古い甲羅を溶解→再吸収→新しい甲羅に再構成しているからだと思われる。

再吸収によって、脱皮で失う栄養分を極力少なくしていると考えられている。

ちなみに、三葉虫はこれができないらしい。




ダンゴムシの甲羅の構造は土と生き物: Hornungの1を見て下さい。



脱皮動物によく見られることだが、抜け殻はすぐに食べてしまう。

殻も貴重な栄養源。




海に住むダンゴムシの仲間の脱皮

ダンゴムシの仲間の、ワラジムシ、フナムシ、コツブムシ、ヘラムシ、ミズムシ、オオグソクムシ、ダイオウグソクムシなども2回にわけて脱皮する。


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後ろ半分を脱皮中のキクイムシ




脱皮を一発で終わらす例外の種類

例外なのは、ヘラムシ亜目で南極周囲にすむヤリボヘラムシ トガリヘラムシの一種Glyptonotus acutusである。

NHKのサイトにこのヘラムシの動画がある。




Robert Y George, 1972, Biphasic moulting in Isopod Crustacea and the finding of an unusual mode of moulting in the antarctic genus Glyptonotus

この種は、体全体を一気に脱ぐことで、脱皮を一回で終わらす。

南極という特殊な環境だから、1回脱皮であると書いてある。



この種は南極固有。Glyptonotus 属自体も、南極に2種、北極に1種しかいない。




(追記)

さらに調べたら、脱皮を一回で終了する種類が、他にもいた。

フナムシ、エビヤドリムシの特殊な脱皮(単相性脱皮)










「なぜ脱皮を2回に分けるのか?」を考えた

同じ甲殻亜門に属する十脚目(エビ、カニなど)や端脚目(ヨコエビ、ワレカラなど)は一回で脱皮を終わらす。

ダンゴムシと体が似ている気がするヨコエビと脱皮の仕方が違う。



脱皮は周囲の環境や、エサの量によって、延期することが可能である。

おそらく、生理学的には、前半分だけが後ろ半分より遅れて脱皮しているのだと思う。

上のトガリヘラムシの論文では、ホルモンが前半分だけ遅れていると予想している。



なぜこの進化が定着したのだろう?

南極のトガリヘラムシの論文には、「背甲がないから」とあった。

(ヨコエビなども背甲がない)



単相性脱皮が不利な点として

いっぺんに脱皮すると
全部の脚(殻)が弱くなり、敵から逃げにくくなる
一気に多くのエネルギーを使うから、死にやすい
うまく脱げず、脱皮に失敗しやすい

などが思いついた。

半分脱皮と全部脱皮の間で、被捕食率、死亡率、脱皮失敗率に差はある?



どこかのホームページで

固まっていない表皮から水分が抜けてしまうから、乾燥を抑えるために2回に分ける。

と書いてあった。

ワラジムシ目は海で進化したので、「乾燥」は理由にならないはず。

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